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 身体中を熱だけが支配する。




 キャロルの感情そのままに魔力が溢れ出すのが分かる。




 砂埃が舞い上がったのを皮切りに部屋中を切り裂く様な風が支配した。


 憎い。


 全てが憎くて堪らない。


 役に立たない自分が1番憎い。


 何一つ守れやしない自分事消えてしまいたい。


 先程の暴発で傷んでいた柱が崩れ轟音を立てて倒れる。


 一寸先も見えなくなる様な吹き荒れ切り裂く暴風。


 吹き飛んだのが天井なのか壁なのかも分からない。


 魔力の制御が出来ない。


 いやするつもりもなかったのかもしれない。


 怒りを抑える術が分からない。


 どこまでも暗い熱に浮かされた感情の抑え方をキャロルは知らない。


 全てを破壊する様な吹き荒れる風の中アルバートの劈く様な絶叫が聞こえた。


 無意識に口角が上がるのが分かる。


 もう自分は狂っているのだろう。


 誰かの断末魔に笑いが止まらないなんて。


 友の亡骸を抱いたまま笑っているなんて。


 狂ってる。


 この世界も自分自身も。




 ふと風に乗った香りが鼻をくすぐった。


 干した布団の様な太陽の香り。


 顔を上げるとベッドの上で傷を負う事なく泣きじゃくっている幼いキャロルが見えた。


 この暴風の中彼女の周りだけ風が避けている。


 この香りを自分は知っている。


 ばっと横を見ると幼いキャロルに手を伸ばしたまま絶命している母親がいた。


 最期に彼女はキャロルに防護壁をかけたらしい。


 彼女は最期に自分を守ったのか。


 そんな彼女を自分は恨み続けていたのか。


 自分の愚かさに今度こそ笑いが止まらない。


 もう真実などどうでも良い。


 見えた真実はあまりにも優しく甘美でそして残酷なまでに冷徹だった。


 もう何も見たくない。


 視界が白く染まっていく。


 内臓を引っ張られる様な感覚に心の何処かで帰るのかと冷静に考える自分がいた。


 吹き飛ばされた部屋の扉の向こうからキャロルの名を呼ぶ声が聞こえた。


 その声が誰の物だったのかは分からない。


 見る前にキャロルは眩しい位の白い世界へ飛ばされていたのだった。

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