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「船で出会った時は嫌になる位見えてたのよ。

 色んな種類がね。

 でも今は見えない。

 気持ち悪い位に。」


 キャロルはチョークを動かす手を止める。


「…そういう事って他にはあるんですか?」


「いえ、あまりないわね。

 でもちょっとあたしは楽よ。

 無意識に見えてしまったあんた達の未来はどれもこれも胸糞悪くなる位に悲劇だったから。」


「悲劇?」


「そう。

 人の未来って無数にあるのよ。

 例えばあんたが2つの扉の前に立っていたならどちらの扉を開けるかによって未来は変わる。

 …あたしが見たあんた達の未来は絶望的過ぎる位どの選択肢の未来にも希望なんてなかった。

 思わず忠告してしまう位にはね。」


「…なるほど。」


 キャロルはまたチョークを動かす。


 絶望しかなかった未来も今は見えないならばもう未来自体がなくなったとも考えられる。


 だからと言って犬死する気はないが。


「あの王太子の未来なんて悲惨そのものだったわ。

 ほぼ自殺か暗殺、数少ない王になった未来も王座は血にまみれて死んだ顔でそこに座るの。

 それでも数年で暗殺か自殺だった。

 見ていて吐き気がしたわ。」


「それはまたドロッドロな未来ですね。」


「あんたもよサイコパス令嬢。

 本来ならあんたはもう殆ど魔力は残ってないはずなのよ。」


「今の所減った様には感じてませんが。」


「それがおかしいっつってんのよ。

 どこかで未来がねじ曲がったんだと思うのよね。

 だから未来が見えなくなった。」


「ねじ曲げるって一体どうやってやるんですか。」


「んな事知らないわよ。

 ただあんたのかけられてる禁術に関わる何かが変わったんだと思うわ。

 何か思い当たる節とかないわけ?」


「思い当たる節ねえ…。」


 キャロルは手を止めてぼんやりと床を眺める。


 禁術に侵された状態を変えたいとは願った。


 だが何かが変わったという感じはしない。


 未だに禁術は解けていないのだ。


 一体何が変わったと言うのか。


「…黒いローブの人物。」


「え?」


 あれだけずっと目に焼き付いていた魔力暴走を起こした日の記憶。


 あの人物の事をずっと思い出さなかったなんてありえるのだろうか。


 何度も魘された悪夢の光景の中であの人物の事だけを忘れ去るなんて。


 そして突然思い出すなんて。


 それがもしねじ曲げた物だとするならば。


「…もしかして過去が変わった?」


「ちょっとあんた無視しないでよね。」



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