222
入学式後からようやく訪れた週末の休みに何故か早朝から訪問者が来ている。
キャロルは寝癖でぐしゃぐしゃになった髪をかきながら少し意識を飛ばす。
茶色いくせっ毛の髪。
つり目気味の目をより釣り上げてキャロルを睨むその瞳。
1度しか見ていないが間違っていなければこの人物はこんな辺鄙な塔に来るような人間ではない。
そもそも会いたいと思える人物ではない。
しかも尋ねて来ておきながらこいつはこの10分程黙ってキャロルを睨み続けているのだ。
厄介事の臭いしかしない。
キャロルだって意識を飛ばしたくもなる。
「…おい。」
「…なんです?」
「俺の事分かるんだろ?
何故入口にずっと立たせている。
不敬だぞ。」
「…はあ、そうですか。
そりゃ申し訳ない。」
キャロルは面倒くささを隠そうとせずどうぞと顎で室内を指す。
そんなキャロルの態度が気に入らないのか舌打ちをしながら彼はキャロルの部屋に入りレオンのクッションにドカッと座った。
「で?」
「で?とは?」
「第二王子が尋ねて来たんだ。
茶ぐらい出したらどうだ。」
「…そこのティーポットに入ってるんで喉が乾いているなら勝手に飲んで下さい。
生憎この塔にはメイドはいないもんで。」
キャロルもソファーに腰掛けながらローテーブルの上のポットを指差す。
やはり予想が当たっていた。
こいつハリー第二王子だ。
ハリー第二王子はブツブツ言いながらもキャロルが動く気がないと察したのか自分でティーカップに紅茶を注ぐ。
「…それで?
ハリー第二王子殿下が直々にこんな所へ何の御用です?」
「その長ったらしい呼び方はやめろ。
ハリーで良い。
お前キャロル・ワインストだろ?」
「はあ。」
「今日は俺が直接お前に釘を刺しに来た。
手紙だけではお前は理解出来なかったみたいだからな。」
「はあ。
釘をねえ。」
キャロルは昨日途中だった魔力供給について考案中の羊皮紙を手に取る。
目の前の少年の話は既に何となく分かった上に大して面白くもなさそうだ。
「なっ!
お前ちゃんと聞け!」
「聞ーてますよ。
ただ私も仕事がありますので。
どうぞ続けて下さい。」
キャロルの態度にハリー第二王子は青筋を立てているがルシウスの笑顔に比べれば全く怖くない。
キャロルは羊皮紙片手にペンをクルクルと回す。
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