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「……ねえキャロル。」
「…はい。」
「勝負しようか?」
「…は?」
一体何を言い出すのかと目を丸くしたキャロルを見てルシウスはクスリと笑う。
「キャロルは呪いを解くために聖龍に会いに行って諦めるなって言われてたよね?
諦めなければ解く方法はあるって事だ。
まあ生きる事を諦めるなって言ってたし精神的に呪いに打ち勝つって意味かもしれないけど、実はキャロルの探せてない場所にその方法があるって意味かもしれない。」
「まあそうですね。」
「だから私と勝負しようよ。
その狂った呪いをどちらが早く解けるか。」
ルシウスはキャロルの前に指を立てる。
「ルールは簡単。
私が呪いを解いたら私の勝ち。
キャロルが解けばキャロルの勝ち。
勝ったらそうだね、相手の命令に従うで良いか。」
「もしお互い解けなければ?」
「その時はお互い負けでしょう?
キャロルが死んだら私はキャロルに命令出来ないんだから。」
ルシウスは首を横に傾げて意地悪な笑みを浮かべた。
「どう?
やる?」
「…このルールだと殿下に得がない気がするんですが。」
「ん?
キャロルを一生下僕にするでも何でも出来るんだから楽しそうじゃない?
呪いを解けばキャロルは筆頭魔術師。
筆頭魔術師の下僕なんて早々手に入る物じゃないしね。」
こいつはなかなか良い性格をしているようだ。
キャロルを助けたいのか屈辱を味あわせたいのか分からない。
「キャロルは?
勝ったら何が欲しいの?」
「私も殿下を下僕にしたいですね。
下僕の王太子なんて滅多に手に入りませんし。」
「それは間違いないね。
じゃあそれで良いかい?」
キャロルが頷くとルシウスが麦酒に口を付ける。
「…何か勝算がありそうですね。」
「ん?
まあ微妙だけどあるよ。」
ルシウスが人差し指を口に当て笑う。
「んー確実じゃないけどね。
キャロルは王立図書館の禁書コーナーってどうすれば入れると思う?」
「王か宰相になる事じゃないですか?」
「うん、正解。
でもあともう1つあるんだよ。」
ルシウスはキャロルの耳元に口を寄せる。
ルシウスの言葉にキャロルは目を見開いた。
ぽかんと口を開けているキャロルの頭に牡丹雪が舞い落ちる。
ルシウスはくすくす笑いながらキャロルの頭の雪を払うとホールに戻って行ってしまった。
キャロルはルシウスの言葉を何度も反芻させた。
『王族が有事の際に使う抜け道から忍び込めば良いんだよ。』
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