秘密とは分からないから秘密なのでありまして

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「…キャロル。

 この本の山何なんだ?」


 おコタで書類にペンを走らせていたレオンが呆れた様子で声をかける。


 レオンの向かい側に座っているはずのキャロルの姿は見えない。


 今にも崩れ落ちそうな本の壁によって視界が阻まれているのである。


「お気になさらず。」


「いやグラグラ揺れてるし気にしないと崩れたら俺も被害来そうなんだけど。」


 レオンの返事にキャロルは舌打ちをしておコタに山積みの本の半分を床に下ろす。


 床も本まみれの為正に移動しただけの状態だ。


「てか一体何調べてんだ?

 魔術関係の本じゃないし魔道具作りってわけじゃないんだろ?」


 レオンは本の1冊を手に取り問い掛ける。


 掴んだ本は『悲劇の姫君~革命で死んだ王女の手記の全て~』であった。


 魔道具開発には必要が無さげである。


 キャロルは本からチラリと目線を上げ値踏みするかの様にレオンを不躾に眺める。


「…なんだよ。」


「…レオン。

 私達って友達なんですよね?」


「おっおう。」


「では私と殿下どちらの味方ですか?」


「ええ?!」


 レオンは手に持っている本をもう一度見て顔色を変える。


 まさかキャロルは革命でもおこすつもりなんだろうか?


 たまにルシウスの玩具扱いされている様な節はあったが殺意を抱く程恨んでいたのか。


「きっキャロル。

 落ち着け。

 反逆は良くないぞ反逆は。

 殿下も話せばきっと分かってくれるから。

 な?」


「…反逆って何ですか。

 まだそんな事しませんよ。」


 その言葉にホッと息を吐く。


 さすがに次期宰相として革命を見過ごす訳にはいかない。


 だがしかしまだって何だ。


「このままだと私、死ぬか殿下の下僕になるしかないんですよね。」


「はあ?!

 何だその2択?!」


「賭けですよ。

 私が下僕になったりした時には革命もやむを得ないと思いません?」


「…いや革命は辞めて欲しいけど…下僕もなあ…。」


 レオンの悲哀の表情を見ながらこれはいけるとキャロルはずいっと身を乗り出す。


「可哀想だと思いますよね?」


「おっおう、それはまあ…。」


 キャロルはその返事に内心ほくそ笑む。


「…じゃあ協力してくれますよね?」


「なっ何を?」


「大丈夫大丈夫。

 レオンにはすっごく簡単な事ですよ。」


 キャロルの言葉に不穏な何かを感じレオンはゴクリと喉を鳴らしたのだった。


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