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「キャロルの服いーよなー。

 超楽そう。」


「今日は魔術師会からの出席ですからね。

 ローブで良いのは楽ですよ。」


 キャロルとレオンは年越しと新年を祝う夜会に出席する為塔で着替えていた。


 キャロルが昔生物兵器を花火と共に打ち上げようとしたあの夜会である。


 今回は聖女様のお披露目という意味が強いという事でルシウスの婚約者候補としての参加ではなく例年通り魔術師会としての出席らしい。


 余程ハリー第二王子は兄に注目させたくないのだろう。


「魔術師会は新年のカウントダウンと同時に花火の打ち上げがありますからね。

 ドレスなんか着てたら動けませんから。」


「まあ確かにな。

 俺なんか軍服だぜ。

 首の所が苦しいんだよなこれ。」


 そうぼやきながら既に1番上の釦を外している。


 まだ夜会に行ってもいないのに大丈夫なのだろうか。


 そもそもルシウスの準備などもあるはずなのにここにこいつはいて良いのか。


 キャロルが胡散臭げにレオンを見る。


「…だってさーこの『おこた』だっけ?

 これダメだって。

 出れなくなるもん。」


 そう。


 キャロルの部屋には『えあーこんでぃしょなー』の開発者からまた教えて貰って作った『おこた』が置いてあるのだ。


 テーブルに熱を発する魔法陣を彫り込み布団を掛けただけだがこれが中々に素晴らしい。


 レオンは『おこた』から出たくないと塔にずっと入り浸っている。


「そういや聖女様と会うのも久々だろ?

 あれから会ってないんだっけ?」


「…そうですね。」


 キャロルは『おこた』に潜りながら思い返す。


 あの日教師役を下ろされてから彩花嬢からの接触はない。


 大方ハリー第二王子か王妃様辺りに止められたのだろう。


 きっと王妃様達は聖女を自分達に逆らわない人形にしたいのだ。


 だから武器を与えようとしたキャロルを排除したのだろう。


 あの後ルシウスがそう教えてくれた。


 キャロルには何も出来なかったが何だかずっとモヤモヤしている。


 魔術を学びたい、楽しいとあれだけ目を輝かせて喜んでいた少女に教えてあげられなかったのだ。


 異世界に来て初めてもっと覚えたいと思ったと言ってくれたのに。


 だがキャロルとて王族に仕える身分である。


 どうしようもないのだ。


 …そう、どうしようもなかったのである。


 それが何よりも悔しい。


「…まっ今日会えるんだし話してみろよ。

 な?」


 レオンに肩をポンと叩かれキャロルは小さく頷いたのだった。

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