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「キャロルー!

 そっちの柱立ったか!?」


「おっけーっすよー。」


 誰もいない砂浜にヤル気満々のレオンとヤル気の欠片もないキャロルの姿があった。


 レオンは砂浜に着くなり釣竿を立てテントの組み立てを始めた。


 非常に素早くヤル気に満ちている。


 対してキャロルは既に暑さで半分死んでいた。


 白いシャツにズボンでやって来たが暑さで既にズボンもシャツも捲りあげている。


 淑女は無闇に手足を見せてはいけない等と言われているが構っていられない。


 淑女らしくしよう物なら暑さで死んでしまう。


 毛玉は近くで砂浜に穴を掘り潜って遊んでいた。


 砂が珍しいのだろう。


 楽しそうにボテボテと跳ね回っている。


「よしっ!

 テントも出来たし遊ぶぞキャロル!」


「何して遊ぶんです?」


「馬鹿だなーキャロル。

 海と言えば泳ぐに決まってるだろ!」


 キャロルは水着等持っていないしそもそもこの国では泳ぐ女性などいない。


 あっても足を付ける位である。


 泳ぐ様な行為ははしたないとされ嫁の貰い手がなくなったりするのだ。


 一瞬悩んだがそもそもルシウスのせいで独身貴族が確定している事を思い出す。


 まあいいか。


 着替えもあるのだし。


 キャロルはそのままの格好で勢い良く水の中に飛び込んだ。


 日差しで焼けた肌に海の水が気持ち良い。


「うわっしょっぱ!

 キャロル!

 海の水ってまじで塩辛いぞ!」


 横でレオンの興奮気味の声が聞こえキャロルも手に着いた水をペロリと舐める。


「しょっぱ・・・。」


「だろ!?

 キャロルすげえ顔!」


 思った以上に塩辛い。


 キャロルの引きつった顔を見てレオンが笑う。


 海に行くと女官に言った時真水を持たされた理由が良く分かった。


 飲めたものではない。


「あっキャロル、お前泳げるのか?」


「いや全く泳いだ事ないですね。」


 そもそも泳ぎは女性としてしてはいけないのだ。


 引き込もりのキャロルに出来るわけがない。


「まじでか。

 競走しようと思ったのになー。

 あっじゃあちょっと練習してみようぜ!」


「練習ですか?」


 キャロルが首を傾げるとレオンがキャロルの両手を持つ。


「俺が手を持っとくからキャロルはまず浮いてみ?

 えーっと力抜いてこうぷかーっと。」


 レオンに言われて力を抜くが体が浮く気配がない。


 真横で毛玉が得意げにぷかぷか浮いて泳いでいる。


 何だか腹立たしい。

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