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 ルシウスがまるで踊るかの様に片手剣を使いアンデッドを切り裂く。


 後ろから斬りかかって来たアンデッドを躱すように空中へ飛び上がる。


「フレイムウェイヴ。」


 着地点にいたアンデッドの脳天を刀身で抉りながら地面にはルシウスから放たれた火の波が扇状に広がりアンデッド達を飲み込んで行く。


 脚に火を着けられ逃げたアンデッド達をリアムが出迎え大剣で薙ぎ払っていく。


 綺麗に首元から真っ二つに切り裂かれたアンデッドの死骸が壁際に積み上がり道を作っていた。


 …これ援護とかいらなくね?


 キャロルは一瞬悩んだが一応役に立たねばと唸る。


「キャロル、お前は何するんだ?!」


 レオンだってキャロルの手助け等必要ないと分かっているであろうにワクワクした顔で聞いてくる。


 何だか無性に腹立たしい。


 キャロルだって筆頭魔術師候補なのだ。


 プライドがあるのだ。


 ここは魔道具以外にも出来る所を見せてやらねばなるまい。


 息を吸い込み精神を集中させる。


 レオンと自分達の周りを防護壁で囲み遠隔でリアムとルシウスにも炎防護の魔術を施す。


 何か感じたのかリアムがチラリと振り返りキャロルを見る。


 キャロルは大きく息を吸い込み地面に両手を着き魔力を流した。


「…インフェルノ!」


 詠唱と共に通路一面に巨大な火柱が地面から何本も吹き上がった。


 その紅蓮の炎はアンデッド達を呑み込み燃え尽きるまで消える事はない。


 火炎系攻撃魔術の中で最上級と言われる術である。


 制御出来ない為、敵味方関係なく燃やしてしまう所が唯一の欠点だが。


「すっげー!!!

 キャロルすっげえ!!!」


 横でレオンが手を叩いて大喜びしている。


 バカは炎と高い所が好きというのは万国共通なのかもしれない。


 まあこれで魔術師としての力量も見せられた事だろう。


 万事塞翁が馬である。


 ルシウスとリアムもアンデッドが火に呑まれたからか帰って来た。


「キャロル嬢、素晴らしい術だがこれは最早援護ではないからな。」


 リアムが大剣に着いたアンデッドの血を布で拭きながら注意してくる。


 ただ別に怒っているわけではないらしい。


「そうだよキャロル。

 確かに凄い技だけど最上級魔術なんか使って龍と戦うとなった時に魔力切れなんてなったらどうするんだい?」


 ルシウスにも苦笑い気味に言われてしまう。


 確かにそうだ。


 そこは反省せねばなるまい。


「すいません。」


「いやいいよ。

 しかし圧巻だね。」

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