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「…なかなかのネーミングセンスだね。」


 何とも言えない顔でルシウスが笑う。


「毛玉、私の髪を噛まなかったかい?」


「あー確か噛んでましたね。」


「だよね。

 1部分だけガチガチに固まってるし。」


 シャワー貸してねと言ってバスルームに行ってしまう。


 キャロルは羊皮紙に寝姿をメモをしようとして悩んだ。


 ホーンラビットは一体普通どの様に寝るのだろうか。


 もしかして毛玉はホーンラビットの生態を調査すると言う役割にはかなり向いていないのではなかろうか。


 明らかに魔獣とは思えないほどアホな寝顔なのだ。


 時々夢を見ているのか鼻を動かし口ももぐもぐしている。


 絶対に自然界で生き残れるタイプではない。


 キャロルは人選、いや兎選をやはり間違ったのかもしれない。


 キャロルは頭を抱えた。


「ん?

 キャロルどうしたんだい?」


 シャワーを浴びたルシウスがキャロルの顔を覗き込む。


 こいつはこいつで一々顔が近い気がする。


「…いえ、私ホーンラビットの中でもかなり変わった物を捕まえてしまったんではないかと思いまして。」


 ルシウスはベッドの上のとうとうオナラまで寝ながら放出した毛玉を目にしてくすくす笑う。


「確かに変わってるけど可愛いよね。」


「私はホーンラビットの観察がしたかったので変わってるのは困るんですが…。」


「ん?

 でもあの毛玉だってホーンラビットだろう?

 ならあの子の観察をすればホーンラビットの観察で間違いないよ。

 私はむしろこういう変わったタイプの子の方が好みだけどね。」


「…殿下のご趣味は一般的ではないと聞いてるので納得し難いです。」


「まあそれは確かにそうだけど。

 でも異端だからって嫌うのは違うと思わないかい?

 実際キャロルはあの毛玉の様子見て嫌だと思う?」


「いやまあ別に呑気だなあ位にしか思いませんが。」


「ならそれで良いんじゃないかな?

 異端でも変わり者でも受け入れる人がいるならそれは問題ないと思うよ。

 無理に型に嵌める必要はないからね。」


 そう言うとルシウスはキャロルの頭を撫でる。


 そう言えばこいつ撫で癖があるんだっけか。


「キャロルもだよ?」


「…なんの話です?」


「…いや勝手に私が想像してるだけだから気にしないで。」


 そう話すルシウスの目は少しだけ寂しげであった。


 少々居心地が悪い。

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