98
キャロルの後ろでレオンがリアムにヒソヒソと話かけている。
盗み聞きしたくはないが狭い部屋の為否が応でも耳に入ってくるのだ。
「なあなあ、令嬢達が離宮に持ち込んだ魔獣ってなんなんだ?」
「あー。
多かったのはホーンラビットだな。」
「ホーンラビット?」
「角が生えてる以外は見た目は兎そのものの魔獣でな。
割と懐きやすいし草食だから魔獣の中では比較的飼いやすいんだが。」
「じゃあなんで問題になったんだ?」
「ホーンラビットは縄張り意識が強いから多頭飼いには向かないんだ。
特にオス同士が出会うとどちらかが死ぬまで戦いだす習性がある。
今回令嬢達がこぞってオスのホーンラビットを飼いだしたせいで離宮内のあちこちで殺し合いになって負けた方が共喰いされるハメになってなあ。
そんな光景に慣れてない令嬢達がそれを見てぶっ倒れまくって気が付けば一大事だ。」
「うわー大変だなそりゃまた…。」
会話を聞いていたキャロルはゆらりと振り返る。
「…リアム様。」
「えっ…?!
どっどうしたキャロル嬢?」
キャロルの目は血走っていた。
必死の形相で白紙の羊皮紙をリアムに突き出す。
「その何とかラビットの絵を描いて貰えますか?」
「あっああ…。」
リアムに若干引かれながらも羊皮紙に描かれたホーンラビットを食い入る様に見つめる。
「これです。
縄張り争いに多頭飼い…。」
「きっキャロル嬢?」
「ありがとうございますリアム様。」
キャロルはリアムにペコっと頭を下げ立ち上がる。
「少々出かけて参ります。」
「えっと何処に…。」
リアムが聞き終わる前にキャロルは塔から飛び出していた。
「…一体何だったんだ?」
「さあ?
ホーンラビット欲しくなったんじゃね?」
取り残されたレオンとリアムは二人共肩を竦めたのだった。
答えはすぐ分かるのだが。
2人が各々の仕事を進めていると部屋の扉が叩かれた。
リアムが扉を開くと山積みの書物を抱えた男性が立っている。
「王宮図書館よりワインスト様のお借りになった御本をお持ち致しました。」
「あっああ。
多分その辺に置いてくれたら良いと思う。」
男性はフラフラしながらも事務机の横に書物の山を置いた。
そしてチラリとリアムとレオンを見る。
「…下にこの4倍御本が残っておりますので手をお貸し願えませんでしょうか?」
「はぁ…?」
混乱しつつも彼等は書物を運んだのだった。
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