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「げっ…。」
忘れ去って羊皮紙に向かっていたキャロルの口から無意識にその言葉が出ても仕方ないだろう。
「げっ、とはまた随分な挨拶だね?」
ルシウスは変わらず笑顔のままだが。
「もしかしてすっかり忘れてた?」
「…。」
キャロルは無言で目を彷徨わせる。
図星なので何も言えない。
ルシウスは書類をレオンのローテーブルに置きダブルベッドに腰掛けた。
キャロルも諦めてソファーに腰掛ける。
外に1度運び出されたがこいつと一緒に寝るなんて冗談じゃないと必死で取り返した大事なソファーだ。
「で?
何を説明すれば良いんですか?
そもそも何が御不満なんです?」
「そうだね。
一番の不満はキャロルがアグネス嬢の派閥に入った事かな?」
そう言われても怒りの理由が分からない。
やっぱりこいつの沸点は謎だ。
「はあ…?
あっアグネス嬢が苦手でいらっしゃるからとかファンティーヌ嬢がお好みだからとかですか?」
キャロルがルシウスの敵対している派閥に入ってしまったのなら腑に落ちなくもない。
派閥位好きな方に入らせろとは思うが。
「いいや。
そこは全く関係ないよ。
もし入ったのがファンティーヌ嬢の派閥でも同じ様に私は不満に思っただろうね。」
振り出しである。
全くもって分からない。
首を傾げ唸るキャロルを見てルシウスがまた口を開いた。
「そもそもどうしてアグネス嬢の派閥に入ろうと思ったんだい?」
「えっと…。
今日レオンから茶会の誘いの手紙を受取りまして。
公爵家2家のどちらかが王妃になるだろうと言う事でどちらに着くか決めろとの意味の茶会だとレオンに聞いてですね。
お茶会の回数も平等でお渡りってのが無い今、人数的にアグネス嬢の派閥が劣勢だと伺いましてそれならそちらに入ろうと。」
「…ふーん?
既に色々言いたい事が山積みだけど、じゃあ意味が分かった上でアグネス嬢のお茶会に行ったって事かな?」
「意味、ですか?」
「君がアグネス嬢を王妃に推すと表明する事になると分かっていて行ったって事かい?」
「えぇ、それはまあはい。
ただ実際には嫌がらせ対策等と判明しましたが…ヒッ??」
ルシウスの顔から笑顔が消えていた。
また魔王モードだ。
いや違う。
本人が言っていたではないか。
これは子供の癇癪だ。
やたら禍々しく重苦しいだけの子供の癇癪のはずだ。
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