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「なるほどね…?
それでキャロルはどうしたいの?」
ルシウスはもう1度顔に笑みを浮かべた。
良く分からないが何とか持ち直したらしい。
心臓に良くない。
「どっどうしたいとは?」
「アグネス嬢の派閥に入ったからにはファンティーヌ嬢の派閥に勝ちたいのかと思ってね。」
「まあそりゃあ派閥に入ったからには一員として負けたくないなとは思ってますが…。」
「へえ。
じゃあアグネス嬢の派閥が有利になる条件は分かるかい?」
ルシウスの質問にキャロルは指を折りながら答える。
「えっと、茶会の回数が多い、お渡りを受ける、最終的には王妃に選ばれる事でしょうか?」
「そうだね?
そしてそれはアグネス嬢じゃなくても、アグネス嬢の派閥に属している人間がその条件を満たせばアグネス嬢の派閥が勝つ事になるんだよ。」
「まあそれは確かにそうですね。」
キャロルは手元のティーカップに継いだ紅茶に口を付ける。
緊張感から口の中がカラカラで冷め切った紅茶が心地いい。
「…いいよ、勝たせてあげる。」
「へ?」
突然笑顔で言われてキャロルは戸惑う。
いきなり物分りが良くなったのは何故だ。
「…えっとありがとうございます?」
良く分からないが勝たせてくれるというのなら素直にお礼を言っておこう。
どうやって勝たせてくれるのだろうか。
アグネス嬢かフワリー嬢に一発逆転出来るというお渡りって奴をしてくれるのかもしれない。
レオンは殴られたと言っていたが、離宮が荒れている今何とかする気にルシウスもなったんだろう。
成長したようで何よりだ。
「何となく何を考えてるか分かるけど、アグネス嬢とフワリー嬢にはしないよ?」
「えっ何でですか?」
「聞いてないかい?
お渡りを受けるとその令嬢は離宮から出られなくなるんだよ。
まだ14歳や12歳の令嬢にそれは可哀想だと思わない?」
「それは確かにそうですが…。」
じゃあどうすると言うのか。
嫌な予感しかしない。
「キャロルなら適任だと思わないかい?」
ルシウスの言葉に嫌な予感が当たったと分かり慌てて首を横に振る。
「わっ私も静流の遺跡にだって行きたいですし出られなくなるのは困ります。」
「ああ、それは大丈夫。
出られなくなるって言うのは外出出来なくなるって意味じゃなくて離宮の外で暮らせなくなるって意味だから。」
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