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 自分の仕事は終わったと防具に向き直る。


 レオン達も作業に戻っており4人だけ別空間になっていた。


 最後の防具が終わりいつの間にか視界がオレンジ色な事に気が付く。


 知らない間に夕方になっていたらしい。


 テーブルには4人とまた執務に戻っているらしいペンを握ったルシウスしかいない。


 …令嬢達はどこに行ったんだろう。


「…他のご令嬢方は今日から離宮に住むからね。

 もう既に部屋で休んでいるはずだよ。」


 キャロルと目が合ったルシウスが苦笑いで教えてくれる。


 離宮に住むのか。


 知らなかった。


 あれ?


 そう言えば自分は何も聞いていないが大丈夫なんだろうか。


「キャロルの場合住んでる塔も離宮って意味じゃ間違ってないからね。

 それにまた出かけたりした時に離宮だと大騒ぎになってしまうんだよ。

 だからキャロルはそのままって事になったんだ。」


「はぁ、そうなんですか。」


「あとキャロルの兄上殿にも頼まれたからね。

 まぁそもそも離宮に住まわせるつもりはなかったけどさ。」


 そうなの?とクリスを見ると少し眉間に皺を寄せて頷いた。


「…今回キャロルが先に婚約者候補に決まってただろ?

 その事でアンジェリカと義母がヒステリー起こしてな。

 キャロルを望むならアンジェリカも候補に上げて欲しいと父上が陛下に頼み込んでアンジェリカも候補に選ばれたんだ。

 アンジェリカは妹だがお前と同じ年だからライバル意識が凄いみたいで…。

 顔を合わせるのはよくないだろうと思って殿下に手紙を送ったんだよ。

『塔も広義で言えば離宮という解釈で構わないと思う』なんて返事が来るとは思わなかったけどな。」


「…父上を言いくるめるにはそう屁理屈こねるしか無かったんですよ。」


「いえいえ、本当にありがとうございました。」


 ルシウスが苦笑しクリスが笑いながら頭を下げる。


「でも王宮内だから顔を合わせる事もあるだろうが、キャロルあんまりアンジェリカとは関わるなよ?」


「なんでですか?」


「2人の事を知っているからこそ言えるがお前達は真逆だ。

 真逆の方向で性格が歪んでる。

 お互いの精神衛生上関わらない方がいい。」


「…分かりました。」


 真逆の方向で性格が歪んでるとはどういう意味だろう。


 さっぱり分からないが馬鹿にされている事は分かる。


 悪口には敏感だと自負しているのだ。


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