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 何故睨まれたのか考えているとアンジェリカの挨拶が終わったらしく全員がこちらを見ている。


 結局一芸が決まっていない。


 どうすっかなあと悩みながら立ち上がり頭を下げる。


「ワインスト家長女のキャロル・ワインストでございます。

 えー…魔道具開発部に務めてます。

 …13歳です。」


 まずい。


 一芸が決まってないのにもう喋る事がなくなってしまった。


 視線を彷徨わせるとルシウスと目が合った。


 パッと閃いた。


 これならイケるかもしれない。


「えっとあの先程歌を歌われていた…」


「私ですか?」


「少しお手伝いをお願い出来ますでしょうか?

 あっあと殿下もお願い致します。」


 私もかい?とルシウスが首を傾げつつも立ち上がってくれる。


 ルシウスが立ち上がるのを見て慌てて令嬢も立ち上がる。


「えっと、ではお二人は並んでこちらに立って下さい。

 ではすみませんがもう一度歌を歌って頂いてもよろしいですか?

 歌に合わせて始めさせて頂きますので。」


「わっ分かりましたわ。」


 令嬢は若干緊張した顔で大きく息を吸った。


 令嬢の口から音が紡がれたその瞬間、庭園がその景色を変える。


 星が流れ落ちてきそうな満点の夜空。


 足元に咲き乱れる花々。


 それを照らし浮かぶ青白い光。


 ルシウスはそれを見て微笑みを浮かべた。


 …あの景色だ。


 令嬢の歌がサビを迎えると同時に足元に咲いていた花々が淡く光り舞い上がる。


 誰かが悲鳴に近いような感嘆の溜息を吐くのが聞こえた。


 令嬢の歌が終わりに差し掛かるとルシウスの手に先程までなかった杖が乗っていた。


 あぁ、私が神の役なんだね?


 きっと邪神適性があるからかと苦笑いをし杖をかかげる。


 その瞬間、空を流星が埋め尽くした。


「これは凄いな…。」


 リアムが無意識に口に出す。


 隣でレオンも惚けた様に呟く。


「これが幻影の魔女…。」


 令嬢が口を閉じると同時に景色が元に戻る。


 先程までの光景が信じられないのか誰も口を開こうとしない。


「えっと以上です。

 宜しく御願い致します。

 あっお二人共ご協力ありがとうございました。」


 キャロルがそう挨拶を締めるとぱちぱちとまばらな拍手が聞こえた。


 クリスとレオンである。


 こいつら仲良いなと思いながらキャロルは席に着いたのだった。

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