39

 ゴブリンの集落に辿り着き、防壁に穴を開け中に足を踏み入れる。


 腐敗した生ゴミと錆びた鉄を混ぜ込んだ様な強烈な悪臭に思わず顔を顰めた。


 なんだか目まで痛い。


 ルシウスは気にならないのか瓶を取り出し地面に置いた。


 中に蜂のフェロモンの匂いが塗り付けてある為ほっとけば自然に戻ってくるらしい。


 足を進めると予想以上の光景が広がっていた。


 最後の1匹はいるんじゃないかと予想していたが相討ちにでもなったのか、死骸のみが転がっている。


 リアムが焚き火の用意を始めルシウスが早速1匹目の耳を削ごうとしているのを見て、キャロルも慌てて鞄から短剣を取り出した。


 レオンもげんなりしながら足元に転がっている死骸を掴む。


 ゴブリンは軽い為マンティコアの様に筋肉的な疲れは少ないが血が緑色で粘りがある分何度も服で短剣を拭う羽目になった。


 確かにこれは捨てるしかなくなるだろう。


 黙々と作業し1人10頭のノルマを終えキャロルは滴り落ちて来た汗を拭った。


 が今度は顔にゴブリンの血が着く。


 不愉快極まりない。


 先に終わらせ焚き火の周りで魔石を回収していたルシウスが気が付いて笑った。


「お疲れ様キャロ。

 防壁を解いてくれるかい?

 馬を連れて来るから着替えを持って川に行こうね。」


 そう言われて黙って防壁を解く。


 喋る事さえ辛かった。


 ぼんやりとしゃがみこんでいる間に着替えを持ったルシウスがキャロルの手を取った。


「ほら、後少しだけ頑張って?」


 そうルシウスに言われてノロノロと足を進める。


 ゴブリンの集落から10分程で川に到着したが限界が来たのか頭から水を被りながら何度も寝そうになる。


 その度に流されそうになってギリギリで目を覚ました。


 なんとか目を覚まし川からあがり着替えるとルシウスが焚き火を作り毛布を渡してくれた。


「はい。

 ご飯は目が覚めてからの方が良いだろうからこれだけ飲んで。」


「…ありがとうございます。」


 初日の様に温かい紅茶にレモンの蜂蜜漬けを落として渡してくれる。


 川で冷えた体がじんわりと温まった。


 キャロルがほぅ…と息を吐くのを笑って見つめルシウスがキャロルの汚れた服を持って立ち上がる。


「もうすぐレオンが来るだろうからそれまでは寝ちゃダメだよ?

 後の事はやっておくからレオンがきたらゆっくり寝るんだよ。」


 既にうつらうつらしているキャロルにルシウスはお疲れ様と頭を撫でゴブリンの集落に戻って行った。

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