10
その日の夕食時、婚約者にしたい令嬢が見つかったと聞き上機嫌だった国王はキャロルの名を告げられ固まってしまった。
「…あー、ルシウス、お前が昔から珍獣や魔物が好きなのは知っていたがな。」
妻まで危険生物を選ぶ事ないだろう…。
国王にとって第一王子であり優秀すぎる息子であるルシウスは自慢であった。
ただ昔から珍獣や魔獣と言われる物を拾ってくる悪癖があるのだ。
しかも反抗的だったり危険であればあるほど手なずけるのに燃えると言う歪んだ性癖を幼い頃から見せていた。
…まさか見合いでまで発揮するとは思わなかったが。
国王は小さく溜め息をついた。
「…あの令嬢は今までのレベルとはわけが違うぞ?」
ルシウスはニッコリとした笑みを崩さず頷く。
「えぇ、分かってますよ。」
何か問題でも?と言わんばかりのルシウスに国王は諦めて了承を告げた。
「…ただ条件がある。
婚約者としてやっていけるか判断する為に15の誕生日までは婚約者候補止まりだ。
お前もキャロル嬢と仲を深めるのはもちろん15歳まではわしの選んだ他の候補者達とも親睦を深めて貰う。」
「他の候補者ですか?」
「あぁ、今週中に選んでおくからきちんと交流して選ぶんだぞ。
後最終的にキャロル嬢を選んだとしても15歳までに情操教育が出来ていなければわしは認めんからな。」
確かに今のままキャロルが王妃となれば開戦まっしぐら、もしくはマリアヌ国自体を滅ぼしにかかるだろう。
それはさすがにヤバい。
人間としての倫理観を教育せねば人類がヤバい。
「そうですね。
頑張って躾てみます。」
ルシウス自身躾と言ってしまっているが誰もツッコミをいれない。
最早婚約者ではなく猛獣と調教師の関係になってしまった。
「キャロル嬢はもちろんだが必ず、か・な・ら・ず他の候補者とも交流するんだぞ?」
ルシウスがあえて無視した事に気がついていた国王は釘をさす。
一瞬ルシウスの背後から黒々としたモヤが見えたような気がしたが折れるわけにはいかない。
キャロル以外の候補者がいないなんてそんな王国の悪夢を見過ごす等出来るわけがないのだ。
「…分かりました。
前向きに検討させて頂きます。」
「断る気満々の返事はやめなさい。
これは決定事項だからな。」
「…分かりましたよ父上。」
舌打ちが聞こえたような気がしたが気の所為だろう。
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