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「…ワインスト嬢、今回の面談の理由なんだけどね。

 婚約者候補に君がなったからなんだ。」


「はあ、血迷われたんですね。」


 婚約者候補になったと告げるとキャロルの興味を引かなかったのかまた資料に目を落とした。


「えっと一応将来の王妃って立場になるんだけどその点についてはどう思う?」


「…世界征服の為の魔道具開発はちょっと心惹かれます。」


 いきなり世界征服しようとしてやがる。


 まさかの開戦希望である。


 ラブアンドピースという言葉は彼女の辞書にはないらしい。


 王妃云々の前に人間を滅ぼさないよう牢獄にいた方が良い人材である。


 レオンはもう我慢出来ずにずっと床にうずくまって爆笑しているし、リアムは途中から思考が麻痺しているのか焦点が定まっていない。





(…どうしたものかな。)


 ルシウスはふぅっと息を吐くとこちらを見ようともしないキャロルを見つめた。


 普通に考えれば即候補者から外すべきだし殺人未遂で逮捕して牢屋に入れておくべきだ。


 人類の為を思うのならそうした方が確実に為になる。



(…だけど)


 どうしても気になるのだ。


 まだ13歳になろうとするはずの目の前の少女の何の感情もともなっていない抑揚のない声や話し方。


 年齢にそぐわない考え。


 まるで人間を、いや世界を憎悪しているかのような目。


 一体どんな風に育てばこんな人間が出来上がるのか皆目見当もつかない。




「…ねえワインスト嬢。」


「なんでしょうか?」


「君は…」


 言葉が続かないルシウスをキャロルがチラっと見る。


 ーまだ間に合うんじゃないか。


 彼女はまだ13歳の少女だ。


 今から矯正すれば少しは人類の敵にはならない様に出来るんじゃないか。


「…婚約者になってくれるかい?」


「は?」


 彼女の表情が一瞬初めて崩れた。


 ポカンとした表情はちゃんと13歳のあどけない少女そのものであった。


(うん、大丈夫かもしれない。)


 ルシウスは天使とも呼ばれる美貌でニッコリとキャロルに笑いかける。


「よろしくね、婚約者様。」


 まるで巨大な糞を見る目で見られたがルシウスは負けずに微笑んだ。



 暫く睨みあっていたがキャロルが先に溜め息をついてまた資料に目を戻した。


 ルシウスは睨み合いを制し国一番の危険な婚約者を手に入れたのである。

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