ないしょのはなし
今日の放課後は私の予想通り、部活が行われた。
駄弁ってばかりいるとさすがに先生たちに白い目で見られるので今回はちゃんとゲーム部らしいことをする。
『ユグドラシルONLINE』での活動だ。
部活専用のサーバーがあるのでそこで各自のアバターを鍛え、高校生用の大会に備える。
Eスポーツというのも認められている時代なので、『ユグドラシルONLINE』もう立派な部活動なのだ。
といっても私の学校のゲーム部はゆるいので大会に出てもすぐ負けちゃうんだと先輩は言っていた。
部活で鍛えたおかげで私のアバターの経験値も少し上がった。
そういえばみんなのアバター…モチーフ決まってたなぁ…。
決まってないの、やっぱり私だけかぁ…。
そろそろ決めないと私だけぼんやりしているようだ。
なんだか謎に焦り始めてしまう。
そんなことを考えながら今日の学校生活は終わった。
あっ、そういえば今朝御神楽さんからいつでもいいからマイルームに来てって言われてたんだっけ。
いくら開けておいてあるとはいえ、急に来たらバタバタすると思うからちゃんと今から行くと連絡をしておこう。
そう思い、私は御神楽さんにメッセージを送る。
するとすぐに御神楽さんから『了解』という返事が来た。
家に帰ると両親は残業のためかいなかった。
連絡も来ている。
ちょっと遅くなるようだ。
なので私は『ユグドラシルONLINE』にログインした後、御神楽さんのマイルームに向かった。
「やあ叶波。来てくれてありがとう」
御神楽さんは私にそう言って微笑みかける。
そのほほえみは本当に美しかった。
ここが御神楽さんのマイルーム…。
イメージ通り『和風』な感じだけど…なんというか思ったよりも殺風景だ。
「ああ、つまんない部屋でごめんね」
私は自分が思った以上にきょろきょろとマイルームを見回してしたらしい。
私はあわててフォローを。
「い、いえ!そんなことないです!シンプルで素敵ですよ」
「無理にフォローしなくてもいいよ。…なんていうか飾り付けっていうの?そういうのよくわかんないからさ。服とかも選ぶのけっこう苦手で適当なんだよね」
それを聞いて私は意外だなと思った。
御神楽さん、顔もスタイルもいいから何を着てもおしゃれに見えてしまう。
「意外ですね…。苦手なことがあるなんて」
「ぼくだって人間だからね。苦手なことくらいたくさんあるよ」
「たくさん…ですか。あっ、ところでなんで私を?」
そういえば御神楽さんメッセージで言ってたな、私が一番ちょうどいいみたいなことを。
…なんでだろう?
そんなことを思っていると、御神楽さんはフラッとしはじめ、その場で座り込む。
その影響か、御神楽さんのホログラムが途切れ途切れになった。
「御神楽さん!?」
私はあわてて駆け寄る。
「ごめん、ちょっと眩暈が」
「やっぱりあの時の…あれが原因じゃ?あの箱を触った時に様子がおかしかったですもん」
私がそう言うと御神楽さんが弱い声で「違うんだ」と言った。
「まああの小箱が関係してるのはほんの少しなんだけど…違うんだよ。キミに話したいことはこのことについてだ」
私はとりあえず、御神楽さん(といってもバーチャルだけど)を横に寝かせることに。
「…ぼくね、記憶喪失なんだよ」
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