みんなを探して5

「そういえば、俺ら以外にだれか人とすれ違っただとか…、人の声を聞いたとか…そういうのはなかったか?」


 穂村さんは柳くんにそう尋ねる。


「すれ違いはしませんでしたけど、声は聞こえました!助けてくれるかもしれないって追いかけたんですけど、声の方向にはもうだれもいなくて…。あとなんかいっぱい罠があって潜り抜けるのに大変でした」


 と柳くんは遠い目をしながら言う。

 

「お前、よく頑張ったな…」

「その声って男の人の声?それとも女の人?」


 私はそう言った後、柳くんは思い出そうとする。


「一人は確実に女性だったんだけど…もう一人はわかりにくかったですね。男性にしては声が高めだけど、女性にしては低めの声。どっちつかずっていう感じです」


 それを聞いて、私は優紗と御神楽さんなのではないかと思った。

 ということは2人は2人で合流していたのかもしれない。


「思い出せる限りで言い、そいつらの口調に特徴とかなかったか?」


 穂村さんは柳くんにそう問いかける。


「女性の方は…なんだか育ちがよさそうな口調だったような気がします。お嬢様言葉的な」

「なるほどな…」


 穂村さんもなんとなく察したようだ。


「もしかしてその二人があなたたちの仲間だったり…?」

「わからねえが、たぶんな。おそらく声した方向にいなかったっていうのは、仕掛けをクリアしたからその場にいなかったのかもしれねえ」

「となると…仕掛けはランダムになっているのかもしれませんね」


 私がそう言うと穂村さんは「ああ…」という。

 続けてこう言う。


「なん分の一の確率で会えるかはわかんねえ。けど、ここにいる限り、合流はできる。行くしかねえだろ?」

「そうですね!行きましょう!」






「それにしても…この場所、ゲームのなかにいるみたいですよね。ところどころ機械的というか、なんというか…」


 と柳くんはそう言う。

 確かに、床とか壁の隙間にチカッチカっと微弱な電気のようなものが走っている。

 あながち、柳くんのいうことは間違っていないのかもしれない。


「もしかして、このアバターを召喚できたり…するわけないか。すみません、こんな状況なのに、バカみたいな冗談を言ってしまって」


 申し訳なさそうに、彼はそう言う。


「いや、やってみる価値はありそうだぞ?こんな場所に来てる時点で実質なんでもありな予感がする」


 と穂村さんはそう言った。

 試しに、と穂村さんは自分のアカウントを開く。

 すると、穂村さんは顔をしかめる。


「穂村さん…?どうしたんですか?」


 私はそんな顔をしかめている穂村さんに問いかける。


「なんか、アバター画面にへんなのがあってな…。」


 と穂村さんは私に端末の画面を見せる。

 アバターが表示されてる部分の三つ下のところに『Avatar On』というものがかかれていた。


「あ、アバターオンって読むんでしょうか?これ…?」


 と、私は穂村さんに聞く。

 私がそう聞くと、穂村さんは少し焦ったあと、「そうなんじゃないか?」と言った。

 …あまり深くは思わないようにしよう。

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