救助って大変ですか? はい。大変です。

第39話

「大丈夫ですかっ!?」

 気付くと僕は走り出し、茂みの中に飛び込んでいた。

 すると鎧を着た男の人が横たわっている。髪の赤い、若い男だ。

 高そうな装備がボロボロになっている。

「…………ぐうっ……」

 僕の声に気付いたのか、彼はかすれる声で痛そうに呻いた。

 よく見てみると鎧の隙間から見える服のあちこちに赤い染みができている。

 ゾッとした。

 それと同時に早く手当てしないと手遅れになることが分かった。

「ウィスプ! しずく! この人を回復して! 早く!」

 あまりの光景に呆然としていたウィスプがハッとしてやって来た。

「……は、はい! 大丈夫ですか? これ、お花もあげますから頑張って下さい!」

 ウィスプも混乱してるのか、さっき作った花飾りを男の人の頭に乗せる。

「…………………………い、いらん」

 男の人は苦しそうに呟く。

 それでもウィスプの魔法が触れると少し楽そうにしていた。

 彼はまたかすれた声でウィスプに言う。

「…………み、みずを……くれ……」

「水? 水ですね? それともミミズですか?」

「……………………水だ……」

「水ならフレアちゃんが水筒を持ってます。フレアちゃん!」

「任せて!」

 フレアは勢いよく水筒の蓋を開けて、あろうことか彼にぶちまけた。

「はい!」

「……………………飲ませろ……」

「もー。それならそうと早く言ってよー」

 水浸しになった男にフレアは頬を膨らませる。

 なんでフレアが怒ってるの?

「分かるでしょ!? すいません! ほら、早く汲んできてよ!」

「それって今じゃないとダメ?」

「ダメ!」

 僕が怒るとフレアは渋々近くに流れる小川へと向った。

「………………………死ぬ……」

「頑張って下さい! 今僕が仲間を呼んできますから!」

 走り出そうとする僕の裾を掴み、しずくが尋ねた。

「さっきの件なのだけど。やっぱりいきなり交尾というのはどうかと思うわ」

「今その話? ていうか僕は一度も言ってないからね!」

「はーい。ミミズ持ってきたよー」とフレア。

「あ、お花の首飾りもあげますね」ウィスプはまだ混乱している。

「………………………死ぬ……」

 もう滅茶苦茶だったけど、回復魔法のおかげでどうにか男の人は一命を取り留めた。

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