外伝3-4 〈影〉幹部、春の直属部隊(前)
「お久しぶりです。春姉様」
フラムと瑠美の次に挨拶をしたのは、赤茶色のロングヘア―で身長も170センチ、目つきは少し鋭めの凛々しさを感じさせる女性だった。
「
「なにを。春姉様こそ。この2年でお美しくなられて。お勤めご苦労さまでした。今日会えるのを楽しみにしておりました」
陽火の隣にはやはり、聡と華恋と立場が似ているだろう子供がいた。しかし、少し付き従っている期間が長いのだろう。躾の効果なのか、従者の女の子は春に向けてしっかりとあいさつを行った。
「あれ……?」
「はい……?」
「髪の毛長いから気が付かなかったけど、もしかしてキミ、男の子?」
「あ、あう……その通りです」
「声変わりしてないんだぁ。かわいー」
「うう」
少女改め少年は陽火の後ろに隠れてしまった。
「春姉様……。まだ慣れておりません。からかうのはその程度に」
「えへへ。ごめんね」
一通り挨拶が終わったのを見計らって、今度は体が大きく、頭にバンダナを巻いてタンクトップを着ている若者が春に手を振った。
「よお。春姉」
「ダイキ。久しぶり。連絡とってない1年でまた体大きくなった?」
「おうよ」
ダイキと呼ばれた彼は身長180センチを超えて190センチ近くある。聡は彼の姿を見て気圧されそうになってしまう。
「フラムー、瑠美も、初任務激やばだったらしいじゃん。いいなぁ、俺も本物の12家のお偉いさんを見たかったぜ」
「そんな生易しいものじゃなかったよ」
フラムをあえて疲れた顔を演技して、思った以上に凄烈だった任務を懐かしむ形で語ろうとした。
しかし、
「あなたが思っている以上に、12家の皆さんはすさまじかったわ。……そうね。はっきり言えば、春姉レベルじゃないと、正直勝ち目ない。天城正人も、御門有也も、〈星光の涙〉を封じた八十葉光も、信じられない強さだった。御門も天城、たった2人で私たちの兵士をほとんど殺しつくしたし、八十葉さんと一騎打ちして、終始押されっぱなしだったもん」
瑠美がフラムが言う前に報告してしまったため、気合を入れたフラムは、自身の不発にしょんぼり。
対し、ダイキは大笑い。
「マジか! へえ、それこそ近くで見たかった。どのみち俺らはあの人たちといずれ戦わなくちゃいけねえんだからさ。なら、早い内に見ておけるなら見ておきたいじゃん?」
「あの戦場に立ってないから言えるんだよ。世界は広い。人間でありながら、〈人〉と互角レベルで戦えるやつもいたよ」
「腕輪なしで?」
「うん」
「なんだよ。それめっちゃ興味あるんだが?」
さらに話に食いつこうと、次に何を聞くか考えていたところ、彼の後ろにいた碧眼の少年が服を少し引っ張った。
「ん?」
「師匠。それ以上は……。皆さんも、リーダー様への挨拶を待ってます」
「……そだな」
春がクスりと失笑する。
「なあに、年下に注意されてるの?」
「いやあ。俺はおおざっぱだからさ。こいつ几帳面だから結構助かるのよ。弟子っていいもんだよなぁ」
ダイキは後ろに居る2人を見て、礼拝堂の端側へ歩く。
聡は目を疑う。先ほどのダイキもかなり筋肉質な男だったが、彼を格闘家とたとえるなら、次に春をに挨拶をした男は、そもそも体が巨大な力士と例えるべき男だった。
「はるねー。ひさしぶりー」
しかし、ダイキに比べて、顔つきはとても穏やか。
「がっちゃん……相変わらずおっきーね」
「オイは体だけが取り柄やからね」
がっちゃん、と
そして、そのがっちゃんなる者の隣には、その隣に似つかわしくない小柄な少女がいた。それこそ、男の半分ほどの大きさしかない。
春はその少女の名前を告げる。
「天音。ただいま。あなたも、1年以上見ない間に大きくなったね」
「春お姉ちゃん……えへへ」
「これからはあなたも先輩よ。新入りがいっぱい入ったの。仲良くしてあげてね」
「はい……!」
ここまでの会話を見て聡も華恋も、春がリーダーを務めていることはよく理解できる。全員が春を慕っていて春を中心にこのチームは動いていることも想像に難くない。そして皆が春に再会しただけで、ぱあっと明るい顔になっているところを見ると精神的な大黒柱と言っても過言ではないのだろう。
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