第57話 Bカップアゲイン

基本、発見次第始末しているゾンビなのだが、例外的に生かしてある個体が2体ある。


1体は実験用として。


このマンションの1階にある飲食店の厨房の鉄パイプに厳重に縛り付け、水だけ飲ませてはいるが食事は与えずに放置している。食料が無くなったらゾンビはどれくらい生きられるかを知る為だ。

コイツらは僕が勝手に動く感染者のことをゾンビと呼んでいるだけで、映画のように死体ってワケではないのだ。栄養補給をしなければいずれは死ぬに違いないだろう。そこら中に彼らのお食事対象が転がっている今、ゾンビの飢え死にする期間を知ったからと言って今すぐ役に立つというワケではないが、いつかこの知識が何かしらに役に立つかもしれないからね。


ちなみにこのゾンビ、元々この店舗の雇われ店長である。”あの日”に「自分の居場所」として自宅ではなく、この店を選んだ様である。

ご近所の顔見知り程度の関係な上、”あの日”以前は結構騒音とかも出しててムカつくときもあった店なので、哀れみとか慈悲とかの感情は覚えない。むしろ、雑に扱えて好都合であった。


彼はまだまだ元気いっぱいな様で僕を認識すると自由になっている首を必死に伸ばしてもそもそと身悶えする。

……こりゃ思ったより死なないみたいだ。実験を継続する。



もう1体は304号室のBカップ娘。

僕が遭遇した初めてのゾンビだね。


何故か他のゾンビの様に殺せずに飼っている状況なのだ。

彼女の腰に抜けない程度に緩ませた縄を括り付けてあり、リード紐の要領でユニットバスの水道パイプに繋げてある。彼女は自分の自由を制限しているものがその縄であると理解できる知性は無い様で、逃げ出される心配はない。


そして、なんと彼女の下半身はスッポンポンであった。

……いやらしいことが目的ではないぞ。これはユニットバスで軟禁しているのも関係しているのだが、ゾンビのトイレ事情は垂れ流しであり、それを水で洗い流すのに都合が良いからせある。パンツを履かせたってお構いなしに脱糞するからな。ならば、はじめから着けていないほうがいい。そんなワケだ。


欲情はまったく沸かない。

考えても見てくれ。ウンコをブリブリお漏らしし、それを平気で踏み荒らすような女、普通に美女だったとしてもお断りだろう。それを興奮する男もいるかもしれないが、あいにく僕にはそんな趣味はないのだよ。


もし欲情したとしても、とても性行為を行おうとは思えない。ゾンビ化現象がどんなメカニズムで発生しているのか見当もついていない現在、それが性感染する可能性だってあるかもしれないのだ。普通の神経していたら無理ってものだろう。

しかし、欲情を覚える様な状況でなくて良かった。その場合、生殺しだったからな。


まあこんな感じで、いまは世話をしている。

世話を始めて1カ月程過ぎたとき、情が沸いたのか簀巻き状態にして転がしておくのも可哀そうだと思い始め、こんな形での軟禁生活を送ってもらっているのだ。


しかし、何故こんな面倒なことをしてるんだろうな。若い女子だから特別ってのはあるかもしれないけど、外で出あうゾンビは若い女だろうが子供だろうが……赤子であろうがお構いなしで始末してるのに。

わずかに残っている罪悪感がそうさせてるのかもな。始末してきたゾンビや救えなかった昏睡状態の感染者に対する罪滅ぼしみたいなものを彼女で満たしているのかもしれない。


……そうそう、昏睡状態のBカップ娘の男だが、こっちには情も何もないので他の昏睡状態の感染者同様に庄内川の投棄場所の近くの公民館に移してある。死んだらルーチン通り川に捨てるだけだな。

こちとら、可愛い女の子と付き合える様な陽キャに優しく接するメンタルは、持ち合わせていないのだ。

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