第2話 不思議な世界に漂着!?


 目が覚めると海岸にいた。いや、海岸に打ち上げられていたと言う方がより正確な表現と言えよう。私は全身がびっしょり濡れた感覚があった。けれど身体が――糸の切れたマリオネットの如く――私の命令に全く反応しない。身体は動かず、とても寒く、絶体絶命の危機である。


 私は取り敢えず現状を理解しようと、重たい頭で思案を巡らせてみることにした。


 えぇと、さっきまでオレンジのドレスを着て結婚式に参加して……。ロマンチスト禁止令が出て……。あぁ、寒い。そうそう、庭で鍵を拾ったんだった……。それにしても寒いな。……そうだ、池に落ちた? いや、寒すぎる。


 寒さで思考が纏まらない。私、このまま凍え死んじゃうのでは? と心配になってきた時に、波の音に混じって砂を踏みしめるような音が聞こえてきた。ゆっくりとしたテンポのそれは、段々と間隔が狭くなってこちらに近づいてくる。そして――。


「人魚が死んでる!」


 子供の声がした。


――私は人間だって! というか、死んでないから!


 頭の中で抗議をするが心の叫びは声にならない。何故かはしゃぐその子供の声を聞きながら、私はサイレント抗議を続けるも、声には全くならなかった。子供は、私が動かないのを良いことに、突いてみたり髪を引っ張ったりと遊んでいた。私は脳内で一通りの抗議を済ませ、そして、とにもかくにも早く助けてくれないかな、と静かに思った――。


 そしてまた私の意識は遠退いていくのだった。


 **


 再び目が覚めたとき、私はふかふかな布団の中にいた。視界に映る天井はまるでお城のそれのように、とても遠くにあって、そしてなんとも綺麗な細工が施されていた。私は暫く仰向けで寝たまま、その高い天井を見つめる。腕や身体を動かしてみると、節々に痛みは残っているが動かせないことはないようだった。私はなんとか起き上がって周囲を確認する。すると、そこは――!


 本当に、まるでお城のような部屋だった。一つの部屋がとても広くて、塵一つ落ちていないツルピカなタイルの床が敷かれている。そして、部屋のありとあらゆるもの全てが絢爛豪華に飾られているのだ。乙女の……いや、私の憧れがここにあった。


 そしてこの憧れの光景に私が感激しているところへ、パタパタパタ……と、扉の向こう側から複数の足音が聞こえてきた。


 ガチャ、ギイィィ――


 先程の披露宴会場の二倍くらいも大きな扉が、大層な音を立てて開かれた。そこに現れたのは、なんと!


 白衣を着た馬と、メイド姿の二羽のフラミンゴだった。

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