第12話 拝啓、ババ抜きのババの気持ち -その2-
若手の方々は基本的にこのような態度で接してくる事が多く、同行をお願いしても断られる事もありました。
徐々に、同行させて頂くのも、ベテランの先輩方が多くなっていきました。
3カ月が経とうとしていたある日、若手の一人が私のテストをすると言い始めました。私は、この社員の方とは1度も同行させて頂いたことも無く、疑問に思いましたが、結局テストを受けました。結果は散々たるものでした。
テストは、客先でお客様がいる前で行われ、口頭で質問され、それに私が回答する形式でした。
少し言い訳がましいですが、今まで同行させて頂いた作業の手順以外の質問が多く、「わかりません」を連発し、お客様の前で大恥をかいてしましました。私は、お客様の信頼も失い、信頼回復したい気持ちと、反省する気持ちもあり、同行して習う以外の個所も勉強したく、サービスリーダーにテスト問題で出た個所を勉強したいので、資料下さいとお願いしました。
すると、「どんな問題か分からない」との事。どうやら、テストをしてきた社員がその場で勝手に思いつた事を質問するテストだったとの事です。
これは、私にお客様の前で「わかりません」と言わせる為に行ったものではないか?
と疑問に思いました。
その後、私が出来なかった事をネタに若手がベテランの先輩方の「指導が悪い」と非難し始めました。
今まで気になっていませんでしたが、若手達が毎日のように繰り広げている、ベテラン社員への影口、悪口。この時、これが「溝」だと確信しました。
それから、ベテラン社員の皆様も私と同行する事に消極的になり、事務所で一人残される日々も多くなっていきました。私と同行の予定が入っている社員の皆様は、
「今日は教えられないから、お手伝いだから。」
と、あからさまに指導というもの、同行そのものを嫌がる素振りを見せる様になってきました。
まるで、ババ抜きのババになった気分でした。
そんなある日、同期の澤田さんが退職されると連絡が来ました。澤田さんは、教育担当者が責められるこの社風の中で、責められても教育をして頂ける社員に恵まれず、退職するしかなかったみたいです。
この会社は、誰かを責めて、悪口を言って、陰口をたたいて・・・まさに、陰湿ないじめが常態化している会社でした。
私にはまだ、チームリーダーが教育担当としてご指導して頂き助けて頂けていました。
しかし、チームリーダーはとても忙しい方で、不在の場合が多く、不在の場合は静かに座っている、そんな日もありました。チームリーダー不在のある日、他のメンバーが本日の予定を協議していましたので、私は
「私も本日予定が空いていますので、良かったら同行させて頂けないでしょうか」
と、声を掛けました。一人の社員から、「急ぐ仕事なのですいません」と断られました。そして周りを見渡すと・・・蜘蛛の子を散らすように逃げていく皆様。
この時、「歓迎されていない」は確信に変わりました。
その後も繰り返される、様々な「歓迎されていない」ことの数々。。
ある日の会議で、若手が
「加山さんが早く出来るようにならないと、僕たちが楽できないじゃないですか。」
同行させても頂けない、同行させて頂ける社員の皆様は責められる・・・
みんなが楽するために私はこんな思いをして働いているのかと、今まで張りつめてきた糸が切れる音が聞こえました。
この、ババ抜きのババ生活に終止符を打つまでにそう時間はかかりませんでした。
最終出社の日、西日本のサービス本部長と面談がありました。
「新人がなかなか定着しないんだよ。正直どう思った?」
「厳しいお話かも知れませんが、一部のモンスター社員が会社の雰囲気を悪くしているのは明確です。私はもう二度とクソ野郎とは関わりたくないですが、クソ野郎を飼っている御社の事も少し見損ないました。」
ここ最近ワイドショー等で報道される学校内でのいじめ報道に関して、非常に心を痛めております。しかし、そういった行為をされる人は、結局大人になって、社会人になっても結局は変わらないと私は思います。そういった方々との接し方は、「関わらないこと」以外に無いのでしょうか?
私は今転職活動をしています。
今回私は離職率の低い会社を選びました。今回の失敗で、離職率で、その会社の雰囲気がいいか悪いかを判断されるのは非常に危険だと痛感しました。計算方法がさまざまあり、都合のいい数字を出すことが出来るからです。
例えば、6月に入社して12月に退社した人がいた場合、4月の社員数にも翌年3月の社員数にも換算されません。つまり、離職率には何の影響も無いと言うことです。
今日も面接があります。
「新人の定着率はどのくらいでしょうか?」
この質問だけは、必ずする様にしています。
敬具
拝啓、転職失敗しました T-たっくん @T-takkun
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