第2話 拝啓、40歳で、それキツイって
拝啓 転職失敗人間様
私の名前は、田嶋 信二 40歳の今年に転職しました。前職では3年前に営業部門トップを取り、社内では次期営業部長かと噂される順風満帆の日々を送っていました。しかし、ここ数年、会社の業績が悪く、とうとう合併の話も上がってきました。
これを機に、転職のお話を聞く様になりました。数社訪問し、色々お話を聞いた中、共通して聞かれる質問が
「年下の先輩とうまくやっていけますか?」
正直、自信はありました。大学時代、交通事故に遭い、2年間留年した私は社会人1年目から年下の先輩と過ごしてきました。大きなトラブルも無く今ままで過ごしてきた事で、年下の先輩に対して嫌悪感を抱くようなプライドは持っていませんでした。そもそも、職業柄、誰に対しても敬語で話す癖も付いており、年齢のことで悩むなんて思ってもいませんでした。
入社1日目、そこにはもう一人の新人が。。。彼の名前は 山崎 翔 なんと24歳。新卒で入った会社を2年で退社し、今回私と同じく中途採用で大阪支店営業部に配属されました。
「前職で営業をやっていましたので、営業は出来ます。」
初日から自信満々の自己紹介をする彼に、少しジェネレーションギャップを感じました。
年下の先輩にご指導頂いていたある日、営業部の先輩より、毎日の倉庫の片づけは新人の二人にやってもらうとのメール。私と山崎さんが担当に、新人として少しでも役に立ちたかった私は毎日一生懸命片づけしました。
「俺忙しいんで、田嶋さんお願いしやす」
そんな言葉に疑問を持ちつつも、とにかく一生懸命業務をこなす毎日でした。
倉庫で会った時も、「田嶋さんも頑張って下さい」という言葉に何か引っかかるものも感じながらも、特に深くは、関わる事無く過ごす日々でした。
営業ミーティングでは、常にワンセット。「山崎君と田嶋さんは・・・」この言葉から始まる言葉に違和感を持ち始めたころ、外部機関での研修の案内通知が
「新人向け営業基礎、言葉遣い、マナー研修のご案内」
参加者は、山崎さんと私。年下の先輩に相談してみました。
「40歳で、山崎さんと一緒に、それキツイっすよ。」
「田嶋さんは経験あるから、免除というわけにはいかないんすよ」
「免除じゃなくてもいいですが、せめて日程は分けて頂けないでしょうか?」
「特別というわけにはいかないんすよ」
その時初めて、年齢に対してのプライドを私も持っていたんだと思いました。
変なプライドを持ってしまった私は、その後山崎さんの事が気になって仕方なくなりました。話しかけてくる際にポケットに入った右手。忘れ物を渡しに行った時に車から降りない態度。そんな山崎さんとワンペアな毎日がストレスでした。
ストレスから逃げるように退社を決め、退職の日、おひるごはんに誘ってくれた年下の先輩から、山崎君が私の事を
「こんなに早く辞めるなんて無責任すよ。むかつくなー」
と言っていることを聞きました。それを聞いた私は、情けなくなり、社会人になって初めて泣きました。
そのあと定時後に、上司にご挨拶させて頂きました。
「優秀な田嶋さんが辞めるなんて残念です。」
「こんなにバカにされているとは思っていませんでした。僕も残念です。」
今は、また新たな面接に挑んでいます。厳しい活動になるとは思いますが、前を向いてやっていこうと思います。
「年下の先輩とうまくやっていけますか?」
「はい。やっていく自信はありますが、一つ確認しておきたいのですが、年下の同期はいますか?」
結構、勘違いされている人が多いんですが、中途入社で一番怖いのは、年下の先輩ではなく年下の同期なんですよ。
敬具
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