第4話 謎
眉間に皺を寄せた篠田がドクタールームに戻ってきた。
「荷物なんだったの?」
相変わらずパソコンの画面から目を離さずに真帆は尋ねた。
「いやぁ、うーん。意味深なノートが一冊。」
「ノート?なにそれ。デスノートとか?ウケる、あなたそういうのお似合いよ。」
篠田はふっと笑い、椅子にゆっくりと腰かけ、手を口元に当てて遠く一点を見つめた。
「なぁ、町田って今何してるか知ってるか?」
「町田くん?なんでまた急に?知らないけど……、ていうかあなたが知らないんなら私が知ってるわけないじゃん。一応Facebookはフォローしてるけど…、あ、最近更新してないわね、彼。なにかあったの?」
「このノート。」
篠田は受付で受け取ったノートをスッと真帆に差し出した。
「おそらく町田のもんだ。筆跡と書いてある内容からして間違いない。」
「ふーん、記者の手帳みたいなものかしら。あら、2月で途切れてるわね…。」
「ああ。それにその後のページ、よく見ると破り取られてんだ。」
「わ、ほんとだ…。よく気づくわね、そんなの。あ、最後のページになにか書いてるわね…。英語かしら。」
「6月30日、このノートが届いた時には俺はもう死んでいる。」
大きく目を見開いて真帆は篠田を見た。篠田はニヤッと笑った。
「そう書いてある。ヤバいよな。」
「ち、ちょっと。いや、ヤバいもなにも、警察に届けたほうがいいわよ。」
「うん…。でも届ける前に少し自分で調べてみたいんだよね。まだ町田のお遊びって可能性もあるし。」
「遊びって……そんなわけ……。」
篠田は真帆の手からパッとノートを取り上げ、何事もなかったかのように電子カルテを確認しだした。
真帆は篠田と長いこと時間を共にしてきたが、男女の関係にならなかったのは真帆が篠田のこういった面を見てきたからだった。稀にこの人はなにを考えているのか分からず、背筋がゾッとすることがある、直感ではあるが真帆は確かに感じていた。頭が良い故の冷たさなんだろうか、それとも……。
ぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴ。
真帆のピッチが鳴り響く。
「やばっ!今日の午後カンファの資料まだだった!」
そう叫びながら真帆は慌ててドクタールームから出て行った。
「やっぱ真帆は巻き込めねぇよ、なぁ町田。」
篠田はそっと呟いた。
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