緑の扉と銃と魔法とリヴァイアサン

@islecape

プロローグ

ちょっと想像してみてほしい。


君があてもなく街をぶらついているとする。


いきなり君の腕に誰かが触れた。振り向くとダイヤモンドと高価そうな毛皮を身にまとう美女がいる。夏なのに。


彼女は君に焼き立てのたこ焼きパックを押し付け、ハサミを取り出しシャツの第二ボタンを切り取った。そして文句を言ういとまも与えず、意味ありげに耳元でささやいてくる。


平行四辺形パラレログラム!」


美女は周囲を警戒した様子で裏通りへ急いで去っていく……。


絵に描いたような冒険の始まりである。さあ、なにから始めようか?


なにも始めないだろう。


たこ焼きの処置に困った君は、周囲を伺いながらそっとパックを脇の植え込みにでも置いて、なくなったボタンのあたりをいじくりながらその場を離れていくだろう。


話はそれで終わりだ。


物語の主人公になるような、真の冒険者と呼べるような人間でなければ、物語も冒険も始まる前から終わってしまう。


冒険のきっかけは、いつだって身近なところにあるのだ。しかしそれに気づく者は少ない。乗りかかる者はもっと少ない。そうしてそのまま素通りし、ごくありきたりの人生を続けていく――

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