「はーい、よーいスタート」

「ちょっと待って。雄二」

「ああ、なんだよ明久？　カメラ回す前に言えよ」

「ごめん。でもさ、このお弁当を食べるシーンなんだけど。なんか紫色のオーラが見えるというか」

「安心しろ。それはきっと幻視だ。においで視覚をやられちまったんだろう」

「幻視！？　という視覚をやられるって！？」

「ほら、そろそろ本番行くぞ」

「待て！　待て！　待て！」

「ああ？」

「ちなみになんだけどさ。このお弁当って誰が作ったか知ってる？」

「……姫路（ボソッ）」

「待とう。このままだと主役不在のまま、撮影が終わってしまうことになるじゃないか！」

「明久。安心しろ」

「へ？　なんで？」

「これが最後のシーンだから」

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