第28話 コーヒーの楽しみ方
食事の後は、二人でプラプラと店を眺める。
映画のテーマ曲にもなっていたCDを探す。
特に何を買うでもなく、本やCDを手にとっては、先ほどの映画の話をしていた。
「なんだか、もう一度観たくなりました。天さん、また一緒に来ましょう」
「うん、いいよ。俺もまた観たくなったし」
「では、次も予定を空けておいてください。いえ、できれば今度は天さんから誘っていただけると……」
「あはは、分かったよ」
「映画の公開は、まだ一か月くらいあるみたいだ。次はいつ頃がいいかな……」
「来週は浜田さんに取られてしまったので、その次の週にでも」
「了解」
と、言われたところで、思いだした。再来週といえば、そろそろテストの時期ではなかろうか。
詳しい日程は忘れたが、勉強する時間を増やさなくてはならない。一夜漬けは苦手だ。毎日コツコツとやるのが、天のやり方だった。
赤点はいつも回避しているが、油断はできない。いつも、平均点付近をうろうろしている。
「
「テスト……? そういえばそんなものもありましたね。忘れていました」
「テストですか……あまり得意ではありません」
「
「はい。特に勉強ができるというわけでもないので」
意外である。勝手な想像だが、
「も、ということは、天さんもですか?」
「俺もあまり頭がいい方じゃないからね。いつも平均点くらいだ」
「私もそのあたりです。特に理数系が苦手で」
少し、
「国語などは満点を取れるのですが、数字となると話が変わります」
「満点? それはすごいな。文系なんだね」
「できれば満遍なくできるように、とは心がけています。ただ、苦手意識が付いてしまって」
「分かる分かる」
天にも苦手な教科がある。一度苦手と思ってしまうと、勉強するのにも何倍もパワーが必要だ。
いつも、音楽を聴きながら、気を紛らわせながら勉強している。それでも教科書に挑むのは苦労する。
お互いの苦労話をしていると、喫茶店が目に入った。
「休憩していく?」
「いいですね。喉も乾いてきましたし」
有名なコーヒーチェーン店に入り、コーヒーを二つ。
天はブラック派である。反対に、
「苦いのは駄目な方?」
「場合によりますが、コーヒーにはいつもこれくらいいれています」
「ケーキよりも甘そうだね」
「これくらいがちょうどいいのです」
山積みになったシロップの抜け殻を見て、天は苦笑するしかない。
「天さんはブラックなのですね」
「なんか、こっちの方がすっきりする気がして。でも、たまには甘いものも頼むよ」
「なるほど。では、今度機会があれば、私がコーヒーを淹れましょう」
「インスタント?」
「……さすがに私でもコーヒーを淹れるくらいはできます」
そんな会話をしながら、天と
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます