第21話 海、智、留
家に着き、部屋に戻った天は、すぐにスマホを見た。
帰宅途中に、何度も振動を感じた。早く見なければ、またどんな勘違いをされるやら。
相手は、当然あの二人。他に天のIDを知っている者がいないので当たり前か。
『センパイ、今日はすみませんでした……』
まず目を通したのは、真波の方だ。
『三橋のバカが、センパイに酷いことしたみたいで……』
大丈夫、と返しておく。結果的には、天への疑いは晴れた。真波も途中から助けに来てくれた。
『クラスのみんなに話を聞いたら、なんでもアイツ、アタシに惚れてたとかいう話らしくて……。それで、センパイに迷惑かけたみたいです』
それは予想外の話だった。
『とにかくすみませんでした。あのヤロウは、今度ガチで蹴り飛ばしておくんで』
いやいや、それはマズい。せっかく事が収まったのだから。
気にしないで欲しい。俺はなんともないから。
そう書いて送ると、真波からすぐに返信が来た。
『ありがとうございます!』
と、スタンプ付きで。猫のようなキャラクターが、お辞儀しているスタンプだった。
その可愛らしさに思わず頬が緩む。
自分も何かスタンプを用意しようかと考えつつ、今度は
『朝はすみませんでした。話を聞いて、急いだのですが』
『あの場は収まったようですが、そのあと、何もありませんでしたか?』
こちらにも、大丈夫、と送る。
なので、ありがとう、とも打っておく。陸野さんのおかげで助かった、と。
『お役に立てたならば良かったです。あと、私のことは
文面から、
苦笑しながら、海、智、留の文字を探す。ただ、いざ打ち終わり、送ろうとすると恥ずかしさのあまり指が止まった。
文字を消して、陸野さん、と書き直す。しかしそれも送るのがためらわれ、どうしたものかと悩んだ。
悩んだ挙句、天は、
スマホが鳴る。どう書かれてきたのか見るのが気恥ずかしくて、天は通知を見ないまま、また電源を切った。
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