第16話 いきなりの疑惑

 翌朝は、好物のこしあんぱんを食べてから学校に行った。

 最高の気分とまではいかないが、今日も普通に乗り切れるだけの栄養を取ったつもりだ。

 昨日、一昨日と妙な出来事ばかり起こっていたが、さすがに今日からはいつもの毎日に戻る。そう思った。

 校門前に着くまでは。


「おはようございます、星野さん」

「おはよーっす、センパイ」

「……おはよう、どうしたの?」


 二人に出迎えられて、天は一歩引いた。二人はそれを見逃さず、


「Lineに返信が来ないので心配になりまして」

「既読すらつけてくれないなんて、酷いっすよー」

「え? あ、あー」


 そういえば、昨日電源を落としてから、そのままだった。

 慌ててスマホを取り出した。電源を入れると、スマホが不満を表すように大きく震えた。ように、思えた。


 アプリの通知欄に、数十件並んでいた。当然、どちらも目の前の二人からである。


「ご、ごめん」

「無視していたわけではないようですね」

「電源切るとか、センパイ細かいっすね」


 少しばかり、にらまれてしまった。

 だが、二人はすぐに機嫌を取り戻し、天の両脇に並んだ。


「行きましょう」

「行きましょーよー」


 急に、両手に華を持たされてしまった。慣れていない状況に戸惑うしかない。

 周囲からの視線が痛い。無能生徒会長が朝から女子と並んでいたら、それはもう奇妙で仕方ないだろう。


 二人とは昇降口ですぐに分かれたものの、刺さるような視線は教室まで続いた。

 教室も教室で、不気味な静けさがあった。今までとは違う、居心地の悪さがある。

 おそらく、昨日の体育館横倉庫の話は知れ渡っているのだろう。三橋という目撃者もいた。簡単に言いふらされそうだ。


 天の知らぬところで、どう話しが曲がっていても、もう気にすることもない。慣れた。席について、授業の準備をする。

 ただ、今日も客が来た。それも、望まれぬ客ナンバーワンだ。


「おはよう、生徒会長、ちょっといいかな?」


 斉藤だった。後ろには三橋もいる。


「……なにかな?」

「昨日のことについて聞きたいんだ」

「昨日? ……何かあったっけ?」


 生徒会の会議の話だろうか。とはいっても、会議に参加しなかったのは一回や二回ではない。追及するにしてもタイミングがおかしい。


「ああ、昨日、三橋が会長から暴行を受けたと聞いてね。本当かどうか、確かめに来たんだ」


 斉藤は、椅子に座った天を見下ろしていた。

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