第10話 二枚ともの手紙
そこには、二人の人間がいた。正確に言えば、二人の女生徒がいた。
天は、慌てて隠れる。二人は、何やら雰囲気悪く立っていた。
双方ともに警戒し、敵意をあらわにしている。一目見ただけでも、二人のいら立ちが手に寄るように分かった。
そして、両方が見たことのある顔だった。
片方は、昨日、天の周りを騒がせた少女、
もう片方は、それより以前から知っている。
ショートカットに、小麦色の肌。陸上部のエースで、生徒会に二人いる書記の片割れ、
どうしてこの二人が一緒にいるのだろうか。しかも、剣呑な雰囲気で。
二人の間に火花が散っているような気がする。そんなレトロな表現がぴったりだ。
顔を出すべきか、出さざるべきか。今の天には判断ができない。
百歩譲って、手紙の一枚が
今は、生徒会が会議をしているはず。浜田はそれに出席しているはずだが。
悩む間にも時間が過ぎていく。このまま待ちぼうけをさせるのは、申し訳ない気がした。
覚悟を決めて、天は物陰から飛び出した。
「こ、こんにちは」
我ながら、情けない挨拶だった。それでも二人は表情を変え、
「星野さん!」
「星野センパイ!」
と、語尾は違えど呼びかけてきた。
「っ!」
「ちっ!」
そして、また空気が悪くなる。二人の間に、何があったのだろうか。
「え、えっと、手紙をくれたのは……?」
問いかけると、
「私です!」
「アタシです!」
答えと同時に、また舌打ちが聞こえてくる。
「二枚、あったんだけど……」
「私がいれました!」
「アタシがいれました!」
状況はさておき、今回の手紙はいたずらではなかったらしい。
にらみ合う二人を見ながら、天はどうしたらいいのか分からず、困り果てた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます