第6話 いきなりの面会

 海智留みちるの家は、商店街とは真逆の方向にあった。

 学校を挟んで、天の家とは反対側にある。昨日、商店街にいたのは、あの事情があったからなのだろう。


 陸野家は、星野家よりもしっかりとしていた。天の家はどこにでもありそうな中流のなかの中流家庭。対する海智留みちるの家は、中流の上といったところか。


「どうぞ」

「お邪魔します……」


 放課後、頼みもしないのに海智留みちるは教室までやってきた。それは、逃がさない、という意味もあったのかもしれない。

 天は逃げる言い訳を作る暇もなく、連れていかれた。しかも、腕をしっかりと組んで。

 背の高い天と、背の低い海智留みちるは、当然のように目立った。天からすれば、拷問にも近い。ただでさえ自分は無能で有名な生徒会長だというのに。


「ただいま帰りました」


 海智留みちるが言うと、すぐに奥から声がした。

 やってきたのは、先日、海智留みちるを迎えに来た女性だった。エプロンを身に着けており、家事の最中だったというところか。


「ああ、おかえりなさい、海智留みちるさん」

「帰りました。村瀬さん、父は?」

「はい、旦那様なら、もうご帰宅なさってますよ」

「分かりました。タイミングがよかったみたいですね」


 女性は村瀬、というらしい。母親ではないようだ。

 深く詮索はすまい。天としては、海智留みちるの父親に会って、娘の暴挙を止めて欲しいだけなのだから。


「あ、こちらは、昨日の……?」


 あちらも、天のことを覚えていたようで、深々と頭を下げてきた。


「あの時はありがとうございました。海智留みちるさんを助けていただいて……」

「いえ、成り行きというか、勢いというか……。気にしないでください」


 同じく頭を下げつつ、天も答える。


「では、星野さん、早速」

「え? いきなり?」

「善は急げと言いますから」


 手を取り、引っ張られて天はリビングへと連れ込まれた。

 そこには既に、一人の男性がおり、


「ただいま帰りました、お父さん」

「おかえり、海智留みちる


 父親だった。

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