帚星を拾った話

よく晴れた月の明るい夜に、空から一筋の光が落ちて行った。帚星が落ちたと話題になった。


ある研究者は地図に何本も線を書いて、ある研究者は黒板に難しい数式を書いて落ちた場所を議論した。


そんなムズカシイ話はわからないから、研究者たちが議論している間に、自分は落ちた方向へ走って行った。

青く光る粉が線を描いて落ちていたので辿っていくと帚星があった。自分はそれを拾うとポケットの中に入れた。


街へ戻る途中で大勢の研究者と助手が見当はずれの場所で帚星を探していて声をかけてきた。

「やあ君は帚星を見なかったかい?」

「知らないよ」と答えると、研究者は連絡先を書いたメモを差し出し、

「謝礼を出すから見つけたらここに連絡をしてくれ、必ずだよ」と言った。

「帚星をどうするつもりだい?」と聞くと

「捕まえて解剖するんだよ、研究のためにね」と研究者は言った。


そのまま知らぬ顔で街に戻りバーに入った。ポケットから帚星を出すと

「これでカクテルを作ってくれるかい」と言うとマスターは

「なかなか良い帚星ですね」と言って青く光るカクテルを作ってくれた。

自分はそれを飲み干した。



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