第33話 冒険者ギルドの陰謀

商会に戻るとアキートが待っていて、一緒に夕食を食べることになった。

夕食をご馳走してくれるらしい。

ゴブリンの群れ殲滅後に夕食をご馳走すると言いながら、村長にご馳走になった事を気にしていたみたい。

俺はどっちのご馳走でも良かったんだけどね。


ハクとレイも人化し、商会の近くにあるレストランに入った。

ハクとレイも人化で一緒に行動したいと言ってたからね。

ハクは俺の右手に腕を絡める。

ハク「ヒナばっかりデートしてずるいよ。」


レイは俺の左手に両手でくっつく。

レイ「デート、したい。」

「はいはい。」


俺、ヒナ、ハク、レイの四人で、レストランの個室に入るとアキートが話し掛けてきた。

アキート「ヒロト様、レイクとアリアがまだ戻って来ないんですよ。」

「盗賊捕縛を報告し、報償金と奴隷売買の代金を貰うだけだよね。」


アキート「ええ、そうです。こんなに時間がかかる事ではないのですが・・・。」


左手のスパに向かって指示を出す。

「スパ、衛兵詰所の様子を探ってくれ。」

スパ「承知しました。小蜘蛛を派遣します。」

まるで左手に腕輪タイプの無線があるようだ。

昔のスパイ映画風。

ちょっとかっこいいね。


「アキートさん、仲間に詰所を調べて貰う事にします。」

アキート「有難うございます。」


ヒナ「アキートさん、奴隷商に行ってみたいんだけど、つてはありますか?」

アキート「この町の奴隷商は1件だけですが、知り合いなのでご紹介を兼ねてご案内します。」


ヒナ「有難う。食後に行ってみたいわ。」

「アリア達が心配なんだけど。」

アキート「直ぐに命の危険があるとは思えないので、大丈夫でしょう。」


「あまり気は進まないけど、そう言うなら行くか。」

ヒナ「うん、行こう。これを逃すと行けない気がする。」


その時、スパから報告があった。

スパ「冒険者ギルドの報告があります。」


スラオに風魔法で部屋の外に声が聞こえないようにしてもらう。

「アキートさん、風魔法で外に聞こえないようにしました。一緒に報告を聞きましょう。」

アキート「はい。お願いします。」

「スパ、有難う。報告を聞こう。」


スパ「明日実施予定だった樹海のゴブリン討伐が延期になりました。」

「え?明日の予定だったんだ。」

アキート「はい、明日討伐に出発する予定でしたが、何があったのでしょうか?」


スパ「理由は討伐隊長だった元Sランクの副ギルド長と主要戦力だったCランクパーティー「深紅の剣」が行方不明になった為です。」

「あら、もろに俺が原因だ。

アキートさん、実は・・・。」

アキートに冒険者ギルドであった事、ダノワ達とグレッグを倒した経緯を説明した。

アキート「そんな事があったのですか。う~ん。」


ヒナ「あの強盗パーティーは「深紅の剣」って言ってたね。趣味悪い名前だし雑魚なのに主要戦力って笑うしかないね。」

「ヒナ、言い過ぎじゃない?」

ハク「良いのよ、私とヒナを連れていこうとしたのよ。」

「それもそうか。」


スパ「深紅の剣の行動は目に余るものがありましたが、討伐に不参加になると困るので、明日の討伐までは自由にさせていたようです。」

「やっぱりギルド黙認だったんだね。」


スパ「強盗した後に副ギルド長が現場を押さえ、それを理由に討伐で無理をさせる計画だったようです。」

ヒナ「最悪!目付きがキモかったんだから。」

ハク「そうそう。」

「あまりこの町に長居しない方が良さそうだ。」


スパ「それからガル村のゴブリン襲来ですが、こちらも冒険者ギルドの企みでした。」

「えええ!そっちもかよ。」


スパ「Cランクパーティー「漆黒の翼」・・・主が倒したパーティーが、ゴブリンの群れを誘導してガル村を壊滅させ、それを理由に領主の騎士団にゴブリン討伐の協力を貰う計画でした。」

「うわ~。酷すぎる計画。村人の命を何だと思ってるんだ!」


アキートは、絶句・・・。

アキート「冒険者ギルドの所為で、私は死ぬところだったのですね。」

「そう言う事だね。」


スパは凄いねー。やっぱ諜報活動は重要だ。


スパ「計画は全て元Sランクであるエルフのギルド長「災厄のゼータ」がたてていました。時期不明ですが、次に実施する樹海のゴブリン討伐は災厄のゼータが討伐隊長になるそうです。簡単ですが報告は以上です。」


アキート「災厄のゼーダは強力な精霊魔法を使うエルフです。その災害に等しい精霊魔法から『災厄』の二つ名になりました。」

「報告有難う。ふむ、本当に災厄なエルフだな。引き続き調査してね。」

スパ「承知しました。」


アキート「ヒロト様、不味いですね。深紅の剣と副ギルド長がヒロトさん達を追って行方不明になった事を、ギルドが知っているとしたら、ヒロトさん達を探しているはずです。」

「そうだね。この町に長居はできない。アキートさんと一緒に町に入った事が分かられると、アキートさんも危ないですか?」


アキート「危険です。領主と冒険者ギルドは繋がっているから、私とヒロトさんの関係もすぐ分かるかも知れません。」

「領主にも密偵を派遣しましょう。」

スパ「承知しました。領主の館にも密偵を派遣します。」


その後、夕食は早目に切り上げて急いで奴隷商に向かう。

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