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空川 新

蜘蛛の巣のような何かは、僕たちを苦しめてならない

「完全球は、蜘蛛の巣とお寝んねだ」


 机はかじかんだ。

 六芒星は花のように散り、シルエットはさながらアイアイだといって過言ではない。

 悪魔は咽び泣き、緑青はキラキラと物憂げに光った。


「9.11は今に勿忘草になるであろう」


 撃鉄が鳴った。

 回転するマグロ。

 ラグランジュは、いまだ煌々と燻っている。


「マルクス。いや、それに倣う者よ。蜂蜜は好きか?」


 アリアドネが申した。

 糸はチャルカーの中でさんざめく。

 痛い、痛い。

 結核が悪化したようだ。


「好みの問題であるならば、やはりそれはアルチンボルド。それ以外にないだろう」

「磊落だな。泉の妖精は、しばし待たれよ」


 二人の紳士が接吻する。

 救命ボートは絶たれた。

 心理の中にある脳梗塞。破れかけた黄金則。

 いじることはまことに許されない。


「フランス革命は、なぜ起こった?」

「愚問。革命とは代謝であるからにして、不公平を均す!」

「芽生えよ。そなた。ミイラたちは、すぐそこにあるのだから」


 赤子は拒んだ。

 じくり、と水風船のように、破裂した。

 修羅の道は、世界と繋がる。

 閻魔大王のお通りだ。


「蜘蛛の巣を壊せ」

「蜘蛛の巣を壊せ」


 捕食者は、冷笑を浮かべる。

 八月の風が、全てを零にする。

 これは警告ではない。

 イントネーションの諦めであった。


 歯車が外れる。

 脳みそが零れる。

 落日の、その日は些か遠くはないであろう。

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WEB 空川 新 @tane07080915

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