降霊出るのもあ
エリー.ファー
降霊出るのもあ
このまま、幽霊となって誰かの前に出るのも悪くはないと思っている。
しかし。
誰かにとりつくのも悪くないと思っている。
というか、そちらの方が趣が出るというものだろう。
違うだろうか。
いや。
そうに決まっている。
ホラー映画なんて、特にそうだろう。
何かと幽霊にとりつかせる。
物や人や、最後は大体、主人公か主人公の彼女で、それを追い払うことによってフィナーレとなる。
私は幽霊だし、そういうものに従うのも悪くはないと思っているが、少なくとも目の前にいる人間くらいは殺したいと思っている。
七人いる。
まず、最初に二人殺した。
何となく玄関の扉を閉めようしたので、その瞬間に玄関を思いっきり閉めて、二人の指先を切断、そのまま歩いていったところにシャンデリアを落とした。死因はどういうことになるのか知らないが、とにかく殺した。
次に一人殺した。
大味に殺すタイプの幽霊だと思われたくなかったのだ。
これで、また二人とか三人以上を一気に殺したら、この幽霊は、マジでなんも分かっていないと思われる。
さすがに、それは避けたい。
というか、事実避けた。
台所のナイフやフライパンがひとりでに浮かび上がるポルタ―ガイストを起こして、怯えている後ろから換気扇を飛ばして首を切断したのだ。飛び散る血液は見ものであったと思う。
しかし。
これは少しばかり誤算だったのだ。
生き残ったうちの一人が言う。
「なんか、上から落ちてくる系多くないか。」
二回しかまだ殺してないのに、シャンデリアと換気扇だけのことなのに、もうマンネリ化しているのである。
殺しのマンネリ化は確かに幽霊側が気にしなければいけないと思う。
それは分かる。
分かっている。
だとして。
それを口に出すか。
普通。
他の生き残りメンバーが明らかにその男に冷たい視線を向ける。何人かは顔も向けずに距離を取り始める。
私は頷かずにはいられない。
「ここにもし、幽霊がいたとして。ナンセンスだよ。」
私は一度、その男を睨み殺してやろうかと本気で思った。
「でも、とにかくこの屋敷は危ないよ。早く外に出よう。」
「駄目よ、雨がひどすぎる。外に出たりしても、どこにも逃げられないわ。やっぱりこの屋敷の中にいるしかないわよ。」
「しかし、もう三人も死んでるんだ。」
「そうだ。こんな屋敷に一秒だっていられない。」
「全くです。同感ですよ。こんな状況から逃れるならなんだってします。」
待て。
ちょっと、待て。
一人、多くないか。
三人殺したんだぞ。
誰。
誰か多い。
屋敷の中に入れるには。
一人ばかり多すぎる。
その瞬間。
屋敷の天窓が割れ、落ちてきたガラスの破片がある男の首を掻き切った。
血は伸びやかに空中を舞い、その霧散する様は屋敷の空気に溶け込むかのようだった。
そのまま男は後ろへと二三歩さがり、壁によりかかり、そのまま動かなくなった。
赤いカーペットに血は全く映えなかった。
「また、何か落ちてきた。ほら、マンネリだ。」
私は天窓を見つめた。
私はしていない。
私は。
天窓を割っていない。
「本当に、幽霊がいるんじゃないの。」
「幽霊がいるのか。」
「幽霊がいるとしか思えません。」
「絶対に幽霊だ。」
「幽霊なんて、そんな非科学的なこと。」
「でも、幽霊がいるとしか考えられないことばかりで。」
「まったくですよね。こんなことになっちゃうなんて。」
「呪いみたいですよ。」
「祟りみたいだわ。それこそ、幽霊とか。」
「また、幽霊幽霊、幽霊、幽霊幽霊幽霊幽霊っ。うるさいっ。」
「静かにしてくれ。このままじゃ全滅だ。」
「でも、怖いですよ。」
誰だよ。
お前ら、何なんだよ。
なんで。
そうやって。
勝手に増えるんだよ。
「幽霊がいますね。」
「幽霊がいますね。」
「幽霊がいますね。」
「幽霊がいますね。」
「幽霊がいますね。」
「幽霊がいますね。」
「幽霊がいますね。」
「幽霊がいますね。」
屋敷の扉や窓が勝手に開く。
そこから折れた木々が飛び込んできて。
全員を刺し殺す。
屋敷は血まみれ。
家具は崩壊。
二階から物音。
「幽霊がいますね。」
降霊出るのもあ エリー.ファー @eri-far-
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます