私は誰
宮瀬 みかん
老い
「あは、マリちゃんすごい」
今日はマリちゃんと遊ぶ約束をして、公園で縄跳びをしている。
マリちゃんは100回以上飛ぶことができて、いろんな技もできる。
私は52回が最高記録で、二十飛びを4回飛べる程度だ。
マリちゃんが言った
「大丈夫、練習すれば誰でもできるようになるよ」
私は少し嫌になってしまって、彼女の優しさに少し甘えることにした。
「もうやめようよ、そうだ、あっちでバドミントンをしよう」
マリちゃんは「いいよ」と微笑む。
マリちゃんの手を引いて、2人で道具を取りに公園の近くにある私の家へと足を運ぶ。
ふと、後ろからマリちゃんのものではない声がして、とっさに振り返る。
私は言葉をなくす。
知らない光景が私の視界と思考を埋め尽くす。
私はマリちゃんの手を掴んでいたはずなのに、その手はどういうことか知らない2人の子供に掴まれている。マリちゃんはいない。
それに先ほどまで居た木々が生い茂った遊具がいくつもある公園とは違い知らない建物がたくさん並んでいる。
知らないたくさんの人が硬い灰色の地面を早々と歩いている。
あまりに知らないものが溢れていて、私は呆然とする。
ここはどこだ。この子供達は誰だ。
それにどうだろうこの子供たちは私をまっすぐ見て「おばあちゃん」と言っている。
知らない子供たちから何度も発せられるその言葉に、次第に苛立ちを覚える。
私は怒鳴った。
何と言おうとしたのか、実際に発せられた言葉は私の思い通りではなかった。
周りを歩いているたくさんの人が、一瞬こちらを向くが、すぐに視線を逸らし早々と歩いていく。
2人の子供たちは悲しい表情を浮かべ、1人は泣いてしまった。
子供たちの後ろから、知らない女性が駆け足でこちらに向かってくる。
「やめなさい、おばあちゃんに話しかけるのは」
女性は頭に手をやり苦悩しているように見える。
私はいたたまれなくなって、この場から離れようと脚を動かす。
重たい。と感じる前に地面へと引き込まれ這いつくばる。
脚が思うように動かない。
女性は悲しいような呆れたような、はたまた怒りを抑えているような冷たい視線を私に向けて
「どうしてうちの母さんが痴呆症に...」
と言った。
興奮も冷めやらぬまま私は思う。
ああ、戻りたい、さっきまでいたあの公園に。
私は誰 宮瀬 みかん @v4_mikan
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