第670話
ダイバは入り口近くでテントを張った状態で隊員たちを2日間休ませることにした。一時的ではあるが、精神が
「自分のテントを持ってるぞ」
「ああ、オヤジたちはそれを使ってもらってもいいけど……エミリアが、それにアゴールもちょっとな」
ダイバがちらりと私の方に目を向ける。その目は私ではなく、タコの吸盤よろしくくっついて離れないアゴールに向けられている。
「は〜い、私も自分のテントで寝る〜」
「却下」
右腕の上腕にアゴールの腕が絡んでいる。そのため動く肘から下をひょいと上げて意見を言うと、ひょいとアゴールの手が出てきてあげた手を下ろされる。
「エミリアさんは私と一緒に寝るの」
今度は自由な左足を膝まで上げる。
「はーい、起きている間は自分のテントで過ごす〜」
「却下」
アゴールの足が、私のあげた足の上に乗ってきて下される。
「……だからといって、その格好はどうかと思うぞ」
「エミリアさんを離さないためだからいいんです」
「しつこくすると……嫌われるぞ」
「………………もん」
ダイバに「嫌われる」と言われたアゴール。私に抱きついたまま俯いているため、私の肩口に
「ん? なんだ?」
ダイバでも聞こえないだろうアゴールの声に全員が耳を
「………………もん」
「アゴール?」
「………………いもん」
ダイバが再度声をかけるが、アゴールの声は小さいまま。私を抱きしめる両腕は小さく震えていた。私とダイバは互いの視線をあわせる。アゴールが暴走する前の状態に近いのだ。
「アゴール……おい」
「……ならないもん! エミリアさんが私を嫌いになんかならないもん! エミリアさんは私の前からいなくならないもん! 出て行って、そのまま帰って来ないことないもん!」
うわああああ!!! と
「エイドニア王国からいなくなったときの話を聞いたのか」
「ひとりぼっちのエミリアさんをっ、みんなが追い回してっ、国から追い出したんだっ!!! いっぱい、いっぱいいっぱいいっぱい、いぃぃぃっぱいっっ!!! 世話になっておきながらぁぁぁ!!!」
どうやら、色んな話が混ざりあってアゴールの耳に入った様子。そういえば、エリーさんやキッカさんたちが後悔を口にしてたらしい。それがまとめてひとつになったようだ。
「アゴールはぁ……私の帰りを待っててくれるの〜?」
「……当たり前よぉぉ」
むぎゅむぎゅむぎゅ〜っと私を抱きしめて、頭を後ろからすりすりすりすりと頬ずりしてくる。……ハゲるから
「じゃあ、必ず帰るから。ちゃんと待っていてくれる?」
「やだっ! 一緒にいくの!」
完全に
「じゃあ、フィムたちはどうするの? 捨ててくの?」
「……それもいやぁぁぁ」
「じゃあ、私が帰ってくるまで待ってて」
「エミリアさんひとりだけ行かせるのもイヤぁぁぁ……」
「ダイバも連れて行くよ?」
「ダイバだけじゃ、しんぱーい」
「おいっ」
ダイバが苦笑しながらツッコミをいれる。アゴールは私を『行かせたくない』から『ひとりで行かせたくない』に変わっている。少しずつ執着が薄れてきた証拠だ。
「俺たちも一緒はどうだ?」
「ついでだからキッカたちも連れて行くぞ」
「……エミリアさんの盾になって、エミリアさんの代わりに死んでくれる?」
「ああ、彼らは『鉄壁の
完全に死ぬこと前提で話が進んでいるし、勝手に鉄壁の
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