第646話
「ユーリカ、大丈夫?」
「私は大丈夫です。ただメッシュさんが休まれなくて」
「ああ、メッシュなんかに合わせてたら……死ぬよ?」
「なんかって何ですか、なんかって」
ユーリカに差し入れに行くとちょうどいい
庁舎にある諜報分析部の
そしてここは休憩用の応接室、結界の魔導具が起動しているため室外に会話は漏れない。応接室セットに盗聴用の魔導具があっても、ここの管理者は妖精たちだ。清掃担当者が魔導具を設置していないか、最終チェックをしている。妖精たちは任された仕事に対しての責任感がとても強く、けっして手を抜くことはしない。だからこそ、情報漏洩を防止するための魔導具だけ起動させる。この結界の魔導具も応接室に設置されているもので、その管理も妖精たちが受け持っている。
「だって、メッシュ。底なしの体力持ちじゃん」
「なに人をバケモノのように……」
「『シーの一族』でしょうが」
呆れたような声を出すメッシュ。しかしメッシュ、いやメッシュたち兄弟は人ではなく妖精に連なる一族。有限の寿命の妖精族だ。
「……え? シーの一族って、あの伝説の?」
「伝説じゃないよ、ここにいるし。メッシュの兄弟もいるし」
「メッシュたちはケット・シー。メッシュはヒョウだよ」
メッシュの兄弟であるフィーメとフォッシュ、スーキィは兄弟姉妹だけど4つ子のため兄だ姉だ弟だ妹だというものはない。同い年は一緒、先の年に生まれたのが兄と姉で、あとの年に生まれたのが弟や妹となる。そして同じ親から生まれても同じ姿とは限らない。獣化の姿はフィーメはトラ、フォッシュは
ちなみにスーキィと一緒に行動しているグッセムはコヨーテのクー・シー。メッシュたちは母胎にいた頃に住んでいた森が壊されて一族バラバラになっている。動物の
「グッセムは当時5〜6歳だっけ?」
「6歳ですね。グッセム
流行り病にかかった母親が亡くなり、緊急で帝王切開をしたがグッセム以外生まれなかったそうだ。グッセムに兄姉がいたが、隣家に住むメッシュの両親が兄姉も含めてグッセムの面倒をみていたそうだ。メッシュの兄姉もグッセムの兄姉も、混乱以降生存は不明だそうだ。
……情報部に所属しているのは一族を探してのことだ。ユーリカも情報を得るために冒険者ギルドに所属していた。情報は家族と生き別れた人たちの望みの綱なのだ。
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