第630話


私が起きてから2時間後……


「久しぶりだなぁ」

ボゴッ

「いやぁ、何十年ぶりだぁ?」

ドガッ

「30年は経ってるだろう?」

ドゴッ

「赤ん坊だったシエラがママだもんなぁ」

ガッツンッ

「…………ねえ、このまんまでいいの?」

「いいわよ。ホントいくつになっても兄弟仲良しねぇ〜」


のほほ〜んと答えたのはセシリアお祖母ちゃん。シーズルのお祖母ちゃんにあたるセイリアさんはお祖母ちゃんの隣で「おほほ」と笑っている。


「エミリアちゃん、私たちをなんて呼ばないでね?」


……なぜバレた?


「じーさんとばーさん」


コルデさんの言葉を言ったらセイリアさんに「エミリアちゃん?」とすごまれてしまった。


「誰がそう言ってるのかしら?」

「エミリアに凄むなよ、ばーさん」


わざと「ばーさん」を強調するダイバ。


「……まあ、生意気に育ったわねえ」

「ばーさんたちが、そんだけ年を食った証拠だろ」

「ばーさん」

《 ばーさん? 》

「ばーさんっていうんだって」

《 おばあちゃんはダメなんだって 》

「「なんでだろうねー?」」


私と隣に座るフィムで顔を見合わせて首を傾げる。あわせて妖精たちも一緒に首を傾げる。両腕を組んで真剣に考えている子もいれば、不思議そうな表情の子もいる。そんな私たちの様子を見ながら頬をヒクヒクさせているセイリアさんが目の端に見える。


「誰があの子たちに私たちをばーさんと呼ばせているのかしら」

「オヤジたちだ」


セシリアさんの声にダイバが即答する。それに私たちが顔を向けると、セイリアさんがいつもダイバたちが遊んでいる店の端へと向かっていく。

そこでは今もまだコルデさんと伯父さんが普通に会話をしながら一発ずつ殴り合っている。


「お顔、ボコボコにならないね〜?」

「ああ、殴り合いながら回復しているからな」

「じーさんは『じーさん』でいいのか?」

「別にかまわんよ。ダイバたちは孫でフィムたちは曾孫ひまごで間違いないからな」


どっがーんっという今まで以上に大きな音が響いて、コルデさんと伯父さんが床にくずおれた。セイリアさんが2人の後頭部を掴んで額を打ちつけたからだ。

お祖父ちゃんがいうには、あの殴り合い方もセイリアさんによる強制終了も一緒に住んでいた頃はいつもだったそうだ。


「あー、やっと家族が揃ったって実感したな」

「アニキ、腕がなまったな」

「冒険者をしている奴と一緒にするな」


コルデさんが楽しそうに話しているけど……座ったままセイリアさんに後ろ身ごろを掴まれてズルズルと引き摺られている。


「あれもいつもの姿だねえ」


きっとコルデさんも両親や兄弟、親戚に会えて嬉しいんだね。そして3人の姿を見て、やっと安堵したのだろうか。声をあげて笑う人たちの表情が完全にゆるんでいた。

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