第566話
ドンッという音が響き吹き飛ぶ魔物たち。共に巻き上がる砂が目に入り目潰しを喰らう人間たち。人間たちは同じく目潰しを喰らって暴れ出した大型の魔物たちに踏み潰されていく。ステータスの中身が周囲に飛び散り、所有者の死を周りに伝えるが、それに気を向けられる者もいない。秒の差で同じ運命を辿っているからだ。
「いやよ……こんな死に方、したくない……」
「この死に方を選んだのはお前たちだ」
「わっ、私は関係ないわ!」
「王族に生まれた。それは罪にならない。しかし、間違った道を
「ま、まって! 声からあなた女でしょう? だったらいくらでも宝石を差し上げるわ。エミリアという職人のアクセサリーだって、戦争に勝てば買い放題」
「私が作ったアクセサリーを私が欲しがるはずがないでしょ。それも貴族や王族に一切売らないから。あなたは生まれ変わらない限り購入できない」
「そんな…………お願い、助けて」
「…………
ザシュッという鈍い音と共に音を立てて落ちた王女の首。火属性をまとわせた剣で傷口を焼き斬ったため出血は少ない。首は渡された収納袋に入れてその場を
「きれいなまま帰らせてあげようとしたのに」
死兵を生み出せる能力は捕らえた
「際限がないから捕虜は将のみとしましょう」
「若干とは言わずたっぷりの余裕があります」
「首は斬り落として首から下は国に返しましょう」
「物も言わぬし、食事もいらない。なんとも楽な捕虜だ。…………いま騒いでる連中もそうする?」
移動檻の中で騒ぐ連中に目を向けると、全員が青ざめて口や首に手を当てて顔を左右に振る。
「食事代を支払います。いままでの倍!」
ひとりの言葉に全員が必死に首を上下に振る。
「早く国に帰れるよ?」
「い、いえ……! 生きて帰らせてください!」
「でも……敗戦国になれば消滅するんじゃない? あなたたちの母国」
ぴたりと声も身体も動きを止める檻の中。通常ならそんなことにならない。しかし、彼らの母国パルクスは死隊のために死兵を……死者を人為的に作り出すなどという悪事を繰り返してきた。敗戦国になれば、見せしめとして母国の罪を問われた将校の捕虜がその首にロープをかけてズラリと並んでぶら下がるだろう。
将校という立場は戦時下にこそ重宝される称号だ。戦勝国となれば褒章が得られ、敗戦国になれば一転、母国の責任を問われて処刑される。
捕虜となっても生かされるのは戦時下のみ。終戦になればいつ罪を問われて処刑されるかわからない。無傷で母国に戻れるのは少尉以下の兵たちだけだ。戻れたところで、重罪で母国が滅びていた場合、国民全員は労働奴隷にされる可能性が高い。
娼館や男娼館などで働かせられるのは貴族のみ。王族は国が滅ぶときには禍根を残さないために老若男女全員が処刑されるからだ。そして旧国民は農民などとなり戦勝国の賎民として働く。最低の生活水準は守られて、働けばその分賃金がもらえて暮らしも良くなる。
ただし、働きもせず不満を訴えるようでは賎民からも外される。そして
「パルクスには各国から追放された
プリクエン大陸は神が見捨てた地。だからこそ、パルクス国が『
「これで
兵士の中に
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。