第552話
《 エミリアが閉じ込められた箱と一緒だった! 》
《 悪い女神の気が入ってた! 》
《 森の中を探したけど、名なしの女神はここにはいなかったよ 》
「つまり、アウミも女神もいないということだな」
《 シーズル、違う! 》
《 うん、違う 》
《 アウミと一緒にいるのは元・女神! 》
妖精たちが両手を腰にあてて頬を膨らませる。……何ともかわいい仕草だけど、妖精たちにとっては大事なことだ。
「シーズル、
「あ、ああ。スマン」
《 わかればよろしい 》
シーズルが謝ったことで妖精たちが笑って許す。ただし、両手を腰にあててさらに胸を張っているが。
「……偉そうに」
《 だって偉いもん 》
「たしかに、妖精の方が精霊の次の立場だよね〜」
《 えっへん 》
私がこの世界の序列を思い出して口にすると妖精たちは胸を張り、ダイバとシーズルは苦笑した。この後の展開を思い浮かべたのだろう、ピピンの様子を窺っている。
「はいはい。偉いと自負する妖精たちに仕事です。その
《 えええー! 》
《 見張りがいるんだよ! 》
「寝てるよ、全員。魔物も揃って夢の中」
リリンがさらっと衝撃発言をする。妖精たちが簡単な報告を終えてシーズルに胸を張っている間、隠しもせずに堂々と二人は作戦をたててサクッと実行に移した。ピピンが魔物用に強めた睡眠薬をリリンに渡して、リリンは触手を床へ伸ばした。その後の展開は聞かなくても簡単に思い浮かぶ。
《 魔物用って…… 》
「だあって。
リリンが眠らせた彼らを見張っていたのだろう。しかし騰蛇が地下へ連れて行ったそうだ。
そのままにしていたら、通りすがりの魔物に襲われかねない。それで騰蛇が保護したのだろう。
「ありゃりゃ。……まあ、私たちが手を出さなくてもいいってことよね」
「まあ、騰蛇の配慮だろ。俺たちがレインドルーブと対峙しなくていいようにってさ」
「あと、
ここは騰蛇が守護するダンジョン
「
「「ありえるな」」
ダイバとシーズルがウンウンと頷くと、エリーさんの一件を知る妖精たちも腕を組んで目を閉じてウンウンと頷く。
「そ・れ・で。残るは魔物だけなんだけど……。戦争不参加のみんなにおまかせしたいな〜、なんて言ってもいい?」
両手を組んでお願いすると、妖精たちが代わる代わる私の頭を撫でる。
《 仕方がないなあ 》
《 いいよ、エミリアは休んでて 》
「私たちが戦闘を指揮します」
妖精たちだけでなく、私たちの魂胆に気付いているピピンたちも魔物の討伐に向かってくれるようだ。
「言っとくけど、冒険者たちがけっこうな人数を倒されているからね。強いことを考慮してよ」
「「「はい」」」
《 まかせて! 》
返事をすると、獣化した白虎の背にスライムに戻ったピピンとリリンが飛び乗る。そして妖精たちは駆け出した白虎を追って宿舎から飛び出していった。
「……アイツらに『窓は出入り口ではない』と教えないといけないな」
みんなが窓から飛び出していったのをみてシーズルが呟く。
「ここにいる三人には無理でしょ。すでに窓から出入りしたもん」
私とダイバはファウシスに向かう際に庁舎の窓から。そしてダイバは、シーズルと共にこの窓から飛び込んできた。
「階段は飛び降りるものだよね」
これはアゴールがいつもやっていること。
「屋根は駆け回るもの、だと言ったな」
「屋根から飛び降りるのも日常だよね」
これらはダンジョン
私とダイバの会話に都長のシーズルは頭を抱えて大きく息を吐いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。