第545話
ダンジョン
「元々は騰蛇が見つけて育ててたんだよね」
《 枯らすのがもったいないから、だって 》
もったいないどころの騒ぎではない。ここにあるものは、この大陸以外でもあまり見つからないものばかりだ。唯一、オリーブの木だけが食用油が採れるということで世界に残された。
ナナカマドは魔を祓えるとして各国では治療院の敷地内に数本しかないそうだ。しかしここにはあちこちで見ることができる。妖精たちの家の敷地の四隅に各一本ずつで計四本。あとはダンジョン
実際問題、意図的ではないかとも思える。
世界樹の枝で杖を作れば、神を滅ぼす『ユグドラシルの杖』となる。禍々しい魔を祓えるナナカマドは、この
「神から見捨てられたこの大陸を守るために、この
妖精たちが移植したい植物のリストとその位置をチェックしていたときにそう話したことがある。まるで人々が神に反旗を
「まるで、神に翻弄されないように守ってくれているみたい」
魔に
魔導具が強化されるまで入ることができた魔に侵された人も、いまでは城門で弾かれるようになった。私が所持している操り水で商業ギルドでは禁制品として取り扱われている。ただピピンと私は
それでも国内外で操り水を使っているサヴァーナ国は違法国として世界に危険視されることとなった。早い国はサヴァーナ国の国民や国に属する商人による越境を禁止した。
「これでサヴァーナがどう動くか、だな」
「国内に流したウワサもいい具合に広がったから、そろそろ動きがあるんじゃない?」
この大陸では、どんな悪事でも神の罰は与えられない。大陸ごと見捨てられたからで、ここにいる人たちも神の加護はない。唯一、ほかの大陸で加護を受けてこの大陸に渡った人が持っているだけ。
重ねた罪を償わなければ死後、罪の大きさによっては魔物に生まれ変わる。騰蛇はそんな神の罰から人々を守るために『神の眷属による罰』を与えている。
「見捨てた地に見捨てた人々。見捨てた以上、罰を下すことはできない。それなのに神は『妖精を救うため』との理由から手を出した。……口実にした妖精だけを救えばいいのに、なぜ国民全員に罰を与えたのか。それは、その妖精が越権行為をした神にとって見捨てられない大切だった神のカケラだったから?」
「その神はなぜ死んだの? っていうか、今までに何人の神が死んで聖霊や精霊、妖精たちに生まれ変わったの?」
「神に関する辞典がないな。知られていない神が多いのか?」
「だいたい……私たち人間が神を討伐したの? 罪を犯した神が殺されたの?」
私たちの考えに妖精たちも騰蛇も、肯定も否定もしなかった。それは私たちが見極めることだというように……
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