第544話
結界を張った仮宿では、妖精たちが私たちがいない間の話をしてくれた。魔導具に使われた魔石を破壊する行為は妖精たちにとって生命を削るほど大きな負荷がかかる。それでも爆弾を止めるために妖精たちが集まって破壊した。数が多かったため負荷が分散されたらしい。
「下手したら死ぬかもしれなかったのに……」
《 エミリアがくれたでしょ、アラクネの妖精服。これがあったから大丈夫だと思ったんだ 》
「でも……」
ダイバが屋根裏部屋から連れてきた妖精たち、中でも三人の疲労は限界直前まで達していた。人数が足りなければ『妖精のたまご』に入って回復を待つことになっただろう。疲労に治療魔法は効かない。ただ……休むしか回復できないのだ。
「ねえ、この子たちをダンジョン
《 私たちの家があるの。 アッシュの樹もあるから、ここで寝るより回復も早いと思う 》
《 え⁉︎ アッシュの樹があるの! 》
《 うん、元々別の場所にあったのを家に植え替えたんだ 》
《 ちゃんとお願いしたら移植を認めてくれたんだよ 》
《 私たちがいるところの人間は誰もいじめてこないよ 》
《 私たちのイタズラも許してくれる 》
《 いっぱい遊んでくれるよ 》
《 ……閉じ込めたりしない? 》
「あー、閉じ込めるよね〜」
私の言葉に、ダンジョン
「あー、勘違いするな。閉じ込めるのはコイツら妖精たち。閉じ込められるのは人間の方だ」
《 そうそう。庁舎で働いてる仲間たちもいるけど、不正を働いた職員を眠らせて一室に閉じ込めたり 》
「
《 あとは騰蛇が地下の住処に連れて行って閉じ込める 》
「そして……
ダイバに補足されて目を丸くしている妖精たち。妖精たちが表に出ることはない。見つかれば捕まると思っているから。だからこそ、存在を認知されるだけでなく一緒に働いているなど驚きでしかない。
ほかの土地に棲む妖精たちは、私やダイバの周りに当たり前のようにくっついて姿を見せている妖精たちにつられて寄ってくるのだ。元々が人懐っこい性格の妖精たち。ただ『イタズラが好き』なだけだ。それは人間でも同じ……
「エミリアだけだ」
《 そうそう。私たち以上にイタズラ好きよね 》
「えええー。……こんなことくらいでしょ」
こしょこしょこしょっと取り出した
《 ひええええええ! 》
《 あー、また持ってる! 》
《 猫じゃらし、没収! 》
「きゃー! 私のオモチャが〜。……いいもん、いいもん」
《 ……エミリア? 》
「まだ持ってるもん!」
カバンに入れてある猫じゃらしを取り出して、両手に持つと逃げ出した妖精たちを追い回す。そして手当たり次第に妖精たちを襲う。その中には廃都に棲む妖精たちも含まれた。
《 きゃー、来たあ 》
《 やあん、こっち来ちゃダメー! 》
妖精たちも本気で逃げていない。これは遊びだとわかっているから。それに気付いて、廃都の妖精たちも笑いながら加わった。もちろんダイバの周りに残ったり隠れた妖精たちには手を出さない。みんながみんな遊びたいわけでも、まだ人間が怖い妖精もいる。魔導具を撤去しようとして減らした
スライムに戻ったピピンとリリンを獣化した白虎が背に乗せて楽しそうに妖精たちを追いかける。リリンは妖精たちを触手で捕まえて、ピピンが鳥籠の中へと放り込んでいく。
《 エミリア、ピピンに鳥籠貸したの? 》
「貸したんじゃなくてピピンが管理してるんだよ」
私の頭で寝転がって話しかけてくる
《 エミリアの
「あ、ちぃちゃん。
《 ヒヤアアアア! 》
隠れたはずだったのに、鳥籠をみて思わず声をあげて私に見つかった
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