第510話


「続き、流します」


ピピンが一時停止させていた映像を再生する。

ハーフエルフは何故か怯えている。その目はエリーさんに向けられていた。しかし、あの怯え方はエリーさん自身でもエルフ族に向けてでもなさそうだ。


「お許しください。私は操られていただけです」

「そんなことで許されるはずがないでしょう!」

「そんな……。私は何も悪いことをしてはいません」

「真実を告げなさい」


おっと〜、教祖様ピピン降臨参戦


操り水は飲ませた本人が命じることができる。おねい様たちはピピンが作ってのませたため、ピピンの言葉は絶対だ。


「はい。私は操り水をのんでおりません。ですがファウシスで男をたぶらかして実権を握るように命じられたのも事実です」

「あなたにそう命じたのは誰です」

「モウマット様にございます」

「それは誰です」

「サヴァーナ国王太子、私はモウマット様の隷妾れいしょうにございます」


隷妾とは奴隷の妾らしい。そしてモウマットのでもある。


「私はレイ、そう呼ばれてきました。両性具有は妊娠しないし孕ますこともない。そのため気付いたときにはすでに王宮で囲われていました」


ここでピピンが映像を止める。ダイバが話をまとめるために止めさせたのだ。


「名前がレイ? ただ単に隷妾だからそう呼ばれていただけじゃない?」

「多分そうだろうな。しかし、引っかかるな」

「なにが?」

「エミリアの奴隷のエルフたち。たしか『姉を探してこの大陸にきた』と言う女エルフが絡んでいなかったか?」


そういえばフリンクとベイルはそう言っていた。その女に騙された形で奴隷商に売られた、と。


「その女が探している姉がレイだと?」

「その可能性は高いのではないか?」


ダイバがピピンに確認するように顔を向ける。ピピンがすでに確認したのではと思っているのだろう。


「エミリアはどう思いますか?」


ピピンにそう言われて考える。引っかかっている部分なら私にもある。


「このレイだけど、いくつから隷妾にさせられたんだろう。親や家族は? それにエルフ族の両性具有って、竜人みたいに成長するとどちらかの性になるとかしないの? それに、誰が『レイは両性具有だ』って言った? 奴隷商を経由したのか、国にいたところを権力で連れて行かれたのか」

《 えらい、えらい。ちゃんとその点にたどり着いたね 》


そう言って私の頭を撫でてきたのは風の妖精ふうちゃん。続けて小さくなった白虎が背中に擦り寄ってきた。


「お前ら。出てくるのは寝るときだけだと約束しただろ」

《 たまにはいいじゃない 》

ガウ


苦笑するダイバに『べ〜』と舌を出した風の妖精ふうちゃんは、《 エミリア〜 》と言いながら私に抱きついて右頬にすり寄る。

……やっぱり私が寝ているときに涙石からでてきて一緒に寝ているようだ。

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