第500話


《 まあったくー。あんな女のどこがいいのよー 》

《 あー、ムリムリ。ダイバには愛妻とお腹に赤ちゃん、カワイイ坊やがいるから 》

《 じゃあ、あの女って他人ひとの旦那様に言い寄ってるの⁉︎ 》

《 サイテー 》

「お前ら、あの女性には手を出すなよ。これからも警備兵を混乱させるためにしてもらうんだからな」

《 じゃあ代わりに、関係ないところで警備兵たちを叩き潰すね 》


怖くて「何を?」とは聞けない。精神や根性だけではないらしい。


《 男の矜持や 》

《 兵士としての矜持に 》

《 一家の大黒柱としての矜持を 》

《 叩きつぶーす! 》

「……ほどほどにしておけよ」

《 ついでに 》

《 高飛車な鼻も 》

《 へし折ーる! 》


この機会にこの町に住む妖精たちは、今までの鬱憤を晴らす気のようだ。


「大丈夫。みんなで確認してるから」


結構慎重なのは、自分たちのしでかしたことが無関係の人のせいにされる可能性があるからだ。そこに、ダンジョン都市シティからきた知能の高い妖精から知識を得て、今まで以上に賢くなった。そのぶん、ファウシスの異常性を理解して昨夜は調べて回ったそうだ。

リリンが結界の外に送り出しているそうで、話し合いも見守っているらしい。


「一応、操られていない店はチェックしていこう。エミリア、さっき購入したのはダンジョン都市シティに帰ったら調査協力のお礼にやるからな」

「でもね、勝手に飛び出してきたよ?」

「ああ、それでもいい。おかげでアニキたちの異常が判明したし、ここの現状も分かった。それに、あれは日本のものだろう?」


ダイバも気付いていたらしい。


「あの人言ってたね、『近くの岩山に数年前まではよく見つかった』って」

「エミリアがこの世界に来たときだな」

「あのね、夢でみたんだけど……聖女としてこの世界に連れてこられたのはもうひとりいる。その子が神に願ったの『二度と聖女が召喚されないようにしろ』って。それは叶えられることになったんだけど……」

「ああ、それから見つかっていない。つまり聖女の召喚が行われなくなったという話と繋がるな」


ダイバは私たち聖女の召喚に関してエイドニア王国に調査を依頼しているらしい。妖精たちがダンジョンで見つけた仏像や塔が、『聖女の召喚に失敗した数』と合うのではないかというのだ。


「結果は?」

「調査中」


ということだ。しかし、ここで新たな情報が手に入った。


「私が知ってるけどかなり古いものがみつかった」

「何年前だ?」

「七十年前かな、古風レトロなものもあるし。火鉢なんて……アレ?」

「どうした?」

「うん。エイドニア王国以外にも召喚を真似たことした国があるって前に言ってたね」

「あー、そういうことか」


ダイバが無料でもらった道具の数々は、どこかの国で召喚を失敗した結果。


「真似で召喚したから被害が小さかった? 本当は大きな災害を受けていた?」


調査を広げてもらうしかないだろう。

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