第423話


バラクビル国…………ダイバたちが生まれて、隣国の侵略を機に捨てざるを得なかった国。


「コルデさん。むかし住んでいた国のことを聞いてもいいですか?」


そう聞いたら……不貞腐れた。なんでやねん!


「エミリアちゃん、コルデは父親になったのに他人行儀なのが寂しいらしいぞ」

「あっ! 俺も俺も! ダイバの兄なのに他人行儀が寂し……グエエ……し、しまる……!」

「オヤジもアニキもいい加減にしろ」

「だって……エミリアちゃんを抱っこしてるじゃないか。俺だって、ヒザに抱っこあんなこと頭なでなでこんなことをしたいぞ!」

「……ミリィおねえちゃあん。あのおにいちゃんが、えっちぃ……」


そういってミリィさんに抱きつくと、代わりにエリーさんがふらりと立ち上がった。


「オボロ……」

「ま、まて、エリー……ぎゃああああああ!!!」


ダイバに首を絞められて逃げ出せなかったオボロさんは、あっさりエリーさんにつかまり、逆エビ固めで悲鳴をあげることとなった。

ちなみにここは私の店。『ひみつの会合』真っ只中だ。二階の一室を会議室にしたのは、話し合う人がダイバ以外に増えたからだ。

ダイバとピピンたちと話した結果、大陸を越えた問題に発展していることで、協力者が多い方がいいという話になったからだ。

メンバーはダイバとミリィさん、エリーさん、コルデさん、アルマンさん、オボロさん、ルーバー、そして私だ。


「エミリアちゃん、ルーバーには私から話して意見を聞くわ」

「お願いします」


ルーバーは店の仕事があって直接話に入れないときは、あとからミリィさんが話をしてくれることになっている。

そして……ダイバから私の話は聞いているらしい。


「簡単に『召喚だなんだという部分は夢でみたが思い出したわけではない。ただ、召喚前のことは思い出している』と話してある」

「それでみんなは納得してる?」

「するしかないだろう。実際にエミリアは覚えていないんだから。ただ『思い出してもらえる希望がもてた』と喜んでいたぞ」


それでも、今までと変わらない関係でいてくれるようだ。そんなことより、もっと重大なことがある。


「魅了の女神に関する一件は?」

「…………話した。珍しくオヤジ組がブチ切れそうだったけどな。しかし、今はアゴールのハラの中だ。どうすることもできん」

「アルマンさんもブチ切れたの?」

「ああ、オヤジ以上に怖かったぞ」

「アゴールよりも?」

「…………アゴールが赤子のようだったぞ」


怒らせないように気をつけよ……


「それで、エミリアちゃん。第一回目の話し合いは、もちろん魅了の女神のことよね?」


なにがなんだろう? ダイバが「怒っていた」と言っていたから、やっつけたいのだろうか。


「いいえ、魅了の女神に関しては火龍の協力で対応ができています」


そういったら、エリーさんにあからさまにガッカリされた。


「いまは竜人のことです」


そして冒頭に戻る。その結果、エリーさんのガッカリに対する鬱憤ばらしは、オボロさんに向けられることとなった。

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