第404話
農園の妖精たちが育てたフルーツガーリックは、火龍が見せてくれた『原始の実』の品種改良されたものらしい。もっとも、農園の妖精たちがフルーツガーリックの種を蒔いたのではない。
《 なんかね、果樹園に近い列がこうなったんだって 》
「それ自体がおかしいでしょ」
だって、私の農園だけどニンニクの種は渡していないのだから。
この大陸の花は生存意識が思ったより強い。神の呪いじゃないのかというくらい、フィールドに植物はない。種のまま地面に埋もれ、わずかな雨で芽吹く。そんな種は、何年も芽吹くことができない場合、種に羽が生える。正確には種の表皮が堅く大きくなることで竹とんぼのように広がって、少しの風でも空をとんで移動する。そうしてとんできた種を持ち込んだ馬車がいたのだろう。
「ねえ、火龍。な〜んかタイミングよすぎない?」
〈ギックー〉
「それに、なんで渡してない野菜まで作ってんのかなあ〜?」
《 ギクギクー 》
「育て方なんて、
《 …………ごめんなさーい!!! 》
隠しごとができない妖精たちが一斉に頭を下げた。一緒に火龍まで頭を下げている。ここでピピンやリリンの触手が動かない。ってことは……
「ピピンとリリンも加担したんだね?」
私が確認すると、白虎の頭の上で笑顔で上下に揺れている。たぶん『私のため』と言われたのだろう。それが今、アゴールとお腹の赤ちゃんを救うことに繋がっている。
「みんな。一度手を出したんだから、最後までやり切るよ。もちろん火龍も、騰蛇もだからね。みんなでアゴールと赤ちゃんを全力で守るよ」
《 うん、わかった 》
《 絶対、助けようね 》
〈我らも協力する。のう? 騰蛇の〉
ゴゴゴッと地面が揺れて騰蛇が肯定する。
「……ありがとう。頼む」
背後から私を抱きしめて、私の肩に顔を埋めて絞りだすようなダイバの震える声。
《 私たちも協力してあげるよ 》
「……逆に心配になってきた」
《 あー、ひっど〜い! 》
《 私たちだってアゴールも赤ちゃんも大事なんだから〜! 》
妖精たちが一斉に私とダイバに向かってきた。これは何かやらかすと思い、真っ先にダイバから離れる。
「あ、どうしたエミリ……アアアアアアア!」
《 そ〜れ! 白虎、やっちゃえ〜! 》
バウッ!
「うっわああ!!!」
白虎が勢いよくダイバに飛びかかる。ダイバが後ろへ倒れると、白虎が嬉しそうにゴロゴロ喉を鳴らしてダイバのお腹の上で腹ばいになり顔を舐め回す。
「うっわ、エミリア……、この図体だけデカいコネコを何とかしろ、うわっぷ」
《 あー、ムリ。白虎、思いっきり遊んでほしいって 》
《 尻尾振って嬉しそうだもん 》
「ハハ……白虎、少しは気を利かせろ」
「ムリだよ。白虎ってまだ子供だもん」
白虎がダイバの顔を舐め回る。それはダイバに向ける愛情であり…………二人が助かると理解できて、安堵から止まらないダイバの涙を舐めとるためだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。