第385話


「ダイバ、あの呪いが向いたのは私だけど……狙われた可能性は」

「シューメリ義母かあさん、か」

「『竜人の先祖返り』だからね。……でも、どこでバレたかなあ。……やっぱり、アレかなぁ」

「エミリア……? 何か心当たりがあるのか?」


私の言葉にダイバが反応した。


「セウルたち兄妹だよ」

「身売りの奴隷、借金奴隷だろ?」

「あんな子供、それもろくに労働もできないアリシアを含めた兄妹をまとめて引き取ったんだよ」


四人のうち最年長が十歳のセウル。アリアスが八歳でキルヒが七歳、最年少のアリシアの年齢は五歳。


「ねえ、知ってる? セウルの上に今十三歳になる男の子がいたんだよ」

「セウルは長男じゃないのか?」

「うん、それにあの子たちが売られたお金は誰が持ってったと思う?」

「……まさか」

「セウルの上の子とその仲間たちが持ってったらしいよ。ついでに、その上にお偉いさんがいた。アリシアが売られたのはそのお偉いさんを見たから」

「それに関してアリシアはなんていってる?」

「怖そうな人。悪そうな人。……お父さんが死んだときに、自分たちを家から追い出した人」


ダイバの目が険しくなる。気が付いたのだろう。心当たりがあるのだろう。……シューメリさんが先祖返りなのを知っている人物を。


「シューメリさんの旦那さんではない。シューメリさんの息子さんは亡くなった。ダイバ、は?」


ダイバがゆっくり繰り返して深呼吸している。落ち着こうとしているのだ。


「シューメリ義母かあさんの、フレイズだ」

「シューメリさんの実の家族じゃないね」

「ああ、シューメリ義母かあさんの旦那の弟。両性具有だから弟であり女でもある」


竜族の場合、先祖返りとまではいかないが両性具有の竜人が生まれることがある。成人までに男女のどちらかになるらしい。


「フレイズは男になるって言ってたが」

「女を選んだらしいよ。アリシア曰く『お母さんより大きかった』らしいよ、胸が」

「……そこまで言わなくてもわかる」

「だって、アゴールやシューメリさんをみてたら勘違いするじゃん……態度とか、声とか、懐とかってさ」

「…………エミリア。一応確認するが、シューメリ義母かあさんをどうみてる?」

「……豪快な母ちゃん」


私の言葉にダイバは項垂れる。


「間違ってない。あってる。確かにあってるが……」

「もしかして、シューメリさんて両性具有だった?」

「いや、聞いてないが……?」

「そのフレイズと一緒にいる長男も両性具有らしいよ。名前はボタジェシカ。こうなったら血筋かも、って感じじゃない?」

「…………どんだけ仮定が増えて調べることが増えるんだ」

「今まで考えなかったことが、一気に目の前に突きつけられたんじゃない?」


私がそういうと、ダイバは大きく息を吐き出した。


「うちも、ジーさんが先祖返りだ」

「ねー、ダイバ。たしかダイバたち竜人を手に入れようとしたから大陸から逃げ出したんだって言ってたよね」

「それがどうした?」

「その国の人たち、諦めなかったんじゃない?」


ダイバは驚いた顔をしてから「いまさら止めてくれー」と頭を抱えた。

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